食の安全コラム

食物アレルギー関連の違反事例と正しい管理方法

高田 淳一(SGSジャパン株式会社)   2012年06月27日

 食の安全を語るうえで、事業者にとって食物アレルギー対応は避けては通れない重要な課題になっています。そこで今回は食物アレルギーの基本情報と最近の違反事例、そして食品工場での管理方法をお伝えしたいと思います。

食物アレルギー基礎知識

食物アレルギーとは

 すでにご存知の方も多いと思いますが、食物アレルギーとは、「食物によって引き起こされる免疫反応を介して、生体にとって不利益な症状が誘発される現象」をさします。このため、食中毒、食物不耐症などは含みません。食物アレルギーの原因は食物タンパク質であり、それ以外の成分(脂質、糖質など)では基本的に食物アレルギーは起きません。

食物アレルギー表示

 2002年4月より加工食品のアレルギー表示制度がスタートし、アレルギー症状を起こしやすい食品として、「乳」、「卵」、「小麦」、「そば」、「落花生」を原材料として含む旨の表示が義務付けられました。その後2008年6月に従来の5品目に加えて「えび」、「かに」を追加する省令が公布され、2011年6月より表示が義務化されました。また、「特定原材料に準ずるもの」として18品目(あわび、いか、いくら、オレンジ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、さけ、さば、大豆、鶏肉、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン、バナナ)の表示が推奨されています。

食物アレルギー保有率

 日本での食物アレルギー保有率は、乳児が約10%、3歳児が約5%、保育所児が5.1%、学童以降が1.3~2.6%程度と考えられています。全年齢を通しても、推定1~2%(約128万人~約256万人)の方が何らかの食物アレルギーをもっているということになります。ちなみに海外では、フランスは推定3~5%(約182万人~約300万人)、アメリカは推定3.5%~4%(約1000万人~約1100万人)が食物アレルギーの保有率となっています。

食物アレルギーに関する違反事例の傾向

 次に、食物アレルギーに関する最近の違反事例の件数と、回収内容・理由をまとめてみました。

最近の違反事例(消費者庁のHPから)

2012年5月  9件
2012年4月  9件
2012年3月 11件
2012年2月 15件
2012年1月  7件

回収内容・理由

【アレルギー表示が欠落した食品「若鶏モモ肉竜田揚げ」について回収】
回収理由:アレルギー物質「卵」の表示が欠落

【アレルギー表示が欠落した食品「カルシウム含有食品」について回収】
回収理由:アレルギー物質「乳」の表示が欠落

【アレルギー物質が混入したおそれのある食物「洋菓子」について回収】
回収理由:アレルギー物質「落花生」が混入している恐れがあるため

【アレルギー表示が欠落した食物「ポテトサラダ」について回収】
回収理由:包材間違いによるアレルギー物質「乳」「豚肉」の表示欠落

【アレルギー表示が欠落した食物「炙りたこ」について回収】
回収理由:小麦アレルギー表示の欠落

違反を起こさないための対処方法

 それでは、上記のような回収事例を起こさないために、実際の食品工場の現場ではどのように管理することが大事なのでしょうか。自社で管理方法を決めて推進したり、第三者の監査を導入するなど、すでにいろいろ対策を取られていると思いますが、私のほうでもポイントをあげましたので今後の参考にしてください。

食品工場での食物アレルゲン管理について

①チーム編成
 まず食物アレルギーの知識がある人、食品の流れを把握している人を中心にチーム編成をします。

②管理状況の調査
 そして、食品が工場内でどう管理されているか、食物アレルギー汚染の可能性があるところをすべて調査します。

③リスク評価
 製造工程ごとにリスク評価し、それぞれの危害要因に対しての対処方法を決めます。

④原材料の管理
 原材料の管理もしっかりと行います。原材料管理が徹底されておらず汚染していると、その後の最終製品の汚染につながります。途中の製造工程をいくら気にかけても、原材料の時点で汚染されていてはどうしようもありません。食物アレルゲン別に保管することや、粉物はなるべく下のほうで保管するなどの対策がとれると良いでしょう。また、本来なら保管前の納品の際や運搬物流時にも気をつけるべきだと思います。混載した袋が破損した場合など、知らないところで汚染の可能性があるからです。

⑤設備
 製造ラインの機器に汚れが蓄積しないように分解清掃がしやすい構造にすることや、清掃時にもコンタミの可能性を極力なくすため、ラインごとに区画を分けることも重要です。

⑥導線の確認
 工場作業員が行き来する動線にも気をつけることです。食物アレルギーを含む製品を作っているラインから、作っていないラインを通ることで従業員を介しての汚染も考えられます。原材料、完成品が通る際なども注意が必要です。

⑦食物アレルゲンの工程管理
 生産工程において、食物アレルゲンを含む原材料を入れる場所を明確にすることも重要です。例えば牛乳が入る工程、小麦が入る工程など、今どの食物アレルゲンが入っている工程かを判別しておき、工程管理表の中にチェックを入れることや色分けをしておくなど、コンタミネーションが起こる可能性がある工程を把握します。 そうすることで従業員の中に、食物アレルギーの入っている製品を扱っているという意識を持ってもらうこともできます。

⑧洗浄
 食物アレルギー原因物質である「タンパク質」は、目に見える大きなもの(残渣など)は取り除けても、見えないところで付着している可能性があるため、洗浄には十分気をつけなれければいけません。そこで、タンパク質の除去には、アルカリ洗浄工程を推奨します。製造工場でアルカリ洗浄を行っているところもあると思いますが、筆者が行っている食物アレルギー検査「ELISA法※1)では、検査に使用する粉砕容器なども事前にアルカリ洗剤で洗浄し、アレルギーの原因物質となるタンパク質を除去しています。
 また、気になる所は、ふき取り綿棒を使用したイムノクロマトでの簡易検査を行い、アレルギー物質(タンパク質)が残っていないか確認することを推奨します。おすすめの方法は、洗浄の工程ごとにイムノクロマトで検査をして、どのように食物アレルギーが減っていくかを一度確認してみることです。例えば、初めに残渣など除去し、そのあと温水洗浄、アルカリ洗剤による洗浄、温水洗浄と行うとします。その行程ごとに検査し、アレルギーがどのように減っていくかを把握することによって、どの部分の洗浄がとても重要なのかが分かるはずです。最近のイムノクロマトキットは性能も非常に向上しており、偽陽性に対しても改善されています。
 最後に、食品製造は製造のプロが行い、洗浄は洗浄のプロに任せる、もしくは専門の指導を受けるといったことも大切です。

※1:ELISA(Enzyme-Linked Immunosorbent Assay)法…サンプル中に含まれる微量の目的物質を、酵素標識した抗体または抗原を用い、抗原抗体反応を利用して定量的に検出する方法。

⑨包装資材の管理
 前出の回収事例にもありましたが、他の食品包装を使用した際に、食物アレルギーの記載が漏れていたという事例もあります。危害要因の中に包装管理も入れるべきでしょう。

⑩最終製品の検査
 最終製品の検査を入れておくのも重要です。ロットごとにELISAでの検査をするとよいでしょう。

⑪従業員の教育
 最後に工場作業員に対しての教育です。いくら工場内で管理していても、働く従業員がなにも指導を受けておらず、食物アレルギーを理解していなければ意味がありません。食物アレルギーがどういった症状を引き起こすのか、工程内でどういったこところにリスクがあるのかなど、従業員への指導も忘れずに行ってください。

  これら以外にも生産工場内で押さえておくことはたくさんあると思います。食物アレルギーを完全に製造工場内でコントロールすることは難しいことです。しかし、製造工程ごとにリスク評価し、それぞれの危害要因への対処方法を会社全体で進めていくことができれば、商品回収のリスクが少しでも減るのではないかと考えています。万が一、混入があった際の回収による金銭的な損失や会社の信頼の失墜を避け、消費者の食の安全を確保するために、ぜひもう一度その管理体制を見直していただきたいと思います。

執筆者プロフィール

高田 淳一(SGSジャパン株式会社)  

2008年よりSGSジャパン株式会社、Foodテスティングセンター食品ケミカル検査を担当。
現在、CTSラボ/ケミカルラボラトリーに所属。食物アレルギー検査、食品放射能検査、他の理化学検査に従事している。

<SGSジャパン株式会社>
1878年に設立されたSGS(Société Générale de Surveillance)グループは、約64,000名の従業員とともに、1,250以上の事務所と試験所を世界中に擁する最大規模の検査、審査登録機関です。SGSジャパン株式会社はSGSグループの日本法人です。

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