食の研究所

出でよ!福島のおいしさを雄弁に語る小売り

菅 慎太郎(株式会社味香り戦略研究所)  2015年03月25日

福島は「おいしい」食の宝庫

筆者は、福島県内企業の風評被害対策の仕事をする機会がありました。具体的には、県内の食関連企業の商品改良や販路開拓を支援するというものでした。

震災以後、福島の食品は取引が全面的に停止されたり、出荷数量が激減したり、売上が厳しい状況に置かれています。また、観光客も減少しており、市場環境が悪化しています。

米どころであった福島は、おいしいお米があるばかりでなく、日本酒の逸品も多数存在しています。1枚ずつ丁寧に手で焼いたせんべいなど、愚直なものづくりの姿がそこにはありました。最近は食品の「安全・安心」ばかりが注目されていますが、「おいしい」という観点から福島の農産物、特産品が評価され、消費につながってほしいものです。

また、福島県いわき市では2012年より、食の「安全・安心」を確保する取り組みや特産品のおいしさを消費者に知ってもらう「見せる課バスツアー」を行っています。いわき市の取り組みの丁寧さや基準の厳しさを参加者に伝えるこのイベントは、着実にファンを増やしています。

消費者が産地や商品、生産者と直接触れることでしか不安が払拭されることはないのでしょう。地道な活動が実を結ぶまで懸命に取り組むいわき市の姿には、これまでの行政の枠を超えた「地域を支える使命感」を感じます。

無口な小売りは怠慢でしかない

このように、福島県の生産者、食品メーカーは品質の追求やPR活動に一生懸命取り組み、売上を復活させようと努力をしています。しかし検査で安全性を証明したとしても、消費者がいちど抱いてしまったイメージを拭い去るのは簡単なことではありません。

そこで必要なのは、現場の取り組みを消費の現場に発信することであり、一人ひとりの消費者に食べてもらい納得してもらう地道な活動の積み重ねです。

そして何より、「県外の人が認めること」が信頼を後押しします。生産者や企業が県外に出かけ、自分たちで安全性やおいしさを訴えても、消費者の不安はなかなか拭い切れません。県外の「小売り」が福島県の農産物の安全性を認め、プロモーションしてくれれば流れは変わっていくことでしょう。

遠方のおいしいもの、見知らぬおいしさを、店頭のコミュニケーションを通して消費者に伝え、購入してもらう。それが本来の小売りの役割であったはずです。商品の良さを伝えられない小売は単なる「利ざや稼ぎ」であり、消費者との対話をしない小売りは怠慢でしかありません。

今こそ「目利き力」のある小売りが現れることを期待してやみません。

執筆者プロフィール

菅 慎太郎(株式会社味香り戦略研究所) 

株式会社味香り戦略研究所味覚参謀、口福ラボ代表。味のトレンドに特化したマーケティングの経験を生かし、大学での講義や地方での商品開発や地域特産物の発掘、ブランド化を手がける。
キッズデザインパーク講師。日本味育協会認定講師。

<記事提供:食の研究所
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