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絶滅危機のウナギは庶民の食卓に戻るのか -ニホンウナギの完全養殖に希望の光

佐藤 成美(サイエンスライター)  2015年07月22日

ウナギは土用丑の日の食べものとしてよく知られ、日本人にはなじみの深い食べものだ。世界にもウナギを食べる民族はいるが、日本人の消費量は断トツだ。

ところが、ここ数年、ウナギの値段は高騰し続け、ついにはニホンウナギが絶滅危惧種に指定された。このままウナギが減り続け、食べられなくなる日がくるのだろうか。

養殖も許可制に、食卓のウナギは幻となるのか

関東地方では4月に真夏日が観測されるなど、今年は早くから暑い日が続く。今年7月24日の土用丑の日にはまだ間があるが、かば焼きの香ばしい香りが恋しくなっている人もいるのではないだろうか。

ウナギは、ビタミンやミネラルを豊富に含む栄養価の高い食品で、昔から滋養食品として食べられてきた。しかし、2014年にニホンウナギが絶滅危惧種に指定され、ウナギ資源に対する危機感が高まっている。ウナギ資源を保護するための対策は強化されており、国内の養殖業は2014年から届け出制となり、今年の6月1日からは許可制になった。相次ぐウナギのニュースに、「ウナギが食卓から消える」と不安を抱いている人も多い。

ウナギ属は知られているだけで世界に19種類分布しているが、日本でみられるニホンウナギ(Anguilla japonica)は、日本のほか、台湾や韓国、中国などに生息している。ウナギは、海と川を行き来する回遊魚で、冬から春にかけて、「シラスウナギ」とよばれる透明な稚魚が日本付近の河口に集まってくる。しばらくして親と同じ色をしたクロコになると川を遡上し、多くは川や池で成長し、成熟すると産卵のため海に向かう。

日本人が1年間に食べるウナギは約6万トンだが、その99%は養殖ウナギだ。養殖業者は、漁師が捕まえた0.2グラムほどのシラスウナギを買い取り、池で餌を与えて、200~300グラムの大きさまで育てる。つまり養殖ウナギとは、天然の稚魚を人工的に育てたものなのである。

シラスウナギの漁獲量は年々落ち込み(図)、それに伴い、取引価格が高騰している。2003年には1キロあたり16万円だった価格が、2013年には過去最高の1キロあたり248万円まではね上がった。2014年は漁獲量が増え、取引価格が少し値下がりしたものの、2015年の漁獲量はかんばしくなさそうだ。こうしたシラスウナギの高騰にともない、一獲千金を狙った密漁が後を断たない。ところが、シラスウナギの不足はいまに始まったことではなかった。

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シラスウナギの国内漁獲量の推移(参考:農林水産省「漁業・養殖業生産統計年報」(1957~2002年)、
2003年以降は水産庁調ベをもとに編集者作成)

シラスウナギ不足は戦前から

ウナギの養殖は、明治時代に始まった。江戸時代までは、川や沼で捕まえた天然ウナギを食べていたが、1879(明治12)年に東京・深川の服部倉次郎が池でウナギの幼魚を育てたのが始まりといわれる。

その後、服部が浜名湖沿岸で養殖に成功したことをきっかけに、この地域を中心に、静岡県や愛知県でウナギの養殖業がさかんになった。大正時代は、まだ天然ウナギの漁獲量の方が多かったが、昭和に入って間もない1928(昭和3)年には、養殖ウナギの漁獲量が天然ウナギの漁獲量を上回った。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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