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「ナントカ水」は健康な人に効果なし?―謎多き「機能水」の正体(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2015年11月25日

電気分解で生じた水素ガスが溶け込んだ水や低温・高圧下で多量の水素ガスを溶解させた水は、試験管内で抗酸化作用を示したものの、健常者を対象にした試験では抗酸化作用は確認できなかった、というのは前篇で話したとおりです。

ただし、動物実験で酸化ストレスの低減が示された例や、腎臓病の患者への透析で水素ガスを多く含む水を使う試みなどが、いくつかの研究グループにより進行中です。結果次第では、将来、水に溶けた水素ガスの抗酸化作用を医療で利用できる可能性はありそうな気がします。

――水素について言うと、「高濃度水素水」と呼ばれる水も売られていますね。これは、電気分解で水素を溶け込ませた水とは違うのですか?

平岡 一般的に、高濃度水素水は、水道水または天然地下水などに、水素ガスを低温・高圧の下でたくさん溶かした中性の水溶液です。

――「高濃度水素水」の体への作用はどうなのでしょう?

平岡 日本医科大学の太田成男教授のグループが中心になって研究を進めていて、抗酸化作用など、効果を明らかにしようとしているようです。

作用が強い分だけ“薬”にも“毒”にもなりやすい

――「バナジウム水」もよく耳にします。前篇でも少し触れていましたが、どんな水ですか?

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平岡 厚(ひらおか あつし)氏。元杏林大学
保健学部准教授。理学博士。1948年生まれ。
東京都立大学大学院理学系研究科生物学専攻
博士課程単位取得退学。杏林大学保健学部を
2014年に定年退職。専門は生化学。「健康に
良い」と宣伝される水製品の性状と実体を研
究するほか、神経疾患の患者の脳脊髄液及び
血清に関する研究なども行ってきた。

平岡 バナジウムは水に溶解してイオンになった場合に複数の電荷をとりうる物質です。地域によっては、他の地域の地下水より高濃度でバナジウムイオンが溶けている場所があり、そこで採れる水が「バナジウム水」と呼ばれています。

バナジウムイオンは、溶けている水素ガスの作用を受けると電荷が相対的に低くなり、還元力が高まって抗酸化作用を示すようになると考えられます。私が行った試験でも、試験管内では、そのようなバナジウムイオンを含む水がある程度、試験管内で抗酸化作用を示しました。



――人体への効果はどうなのでしょう?

平岡 山梨県の富士山科学研究所が研究を進めています。富士山麓地域の水道水にはバナジウムを含む富士山の地下水が使われているため、この水を長いこと飲んでいる地元住民の健康状態はどうかを調べる疫学研究などが行われています。ただし、最終的な結果はまだ出ておらず、健康効果があるのか、あればどんなものか、現時点ではまだ分かりません。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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