食の研究所

加工肉でがんになる?本当はどんな報告だったのか ~誤解だらけの加工肉・赤肉問題(前篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2016年02月18日

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食についての大きな関心事がまた1つ増えた。ハムやソーセージなどの加工肉や、牛肉や豚肉などの赤肉などの摂取と、発がんの関係性が取り沙汰されている。

2015年10月、国連・世界保健機関(WHO)の附属機関である国際がん研究機関(IARC)が「赤肉と加工肉の摂取の発がん性」という報告書を出し、加工肉については「人に対し発がん性がある」、赤肉については「おそらく発がん性がある」としたのだ。マスメディアがこれを大きく報じ、心配になった人びとが肉の買い控えをする事態になっている。

降って湧いたように起きた赤肉・加工肉に対する心配事。だが、今回の発表はどのような位置づけのものなのか。また、日本人はこの発表をどのように受け止めればよいのか。そもそも肉の摂取だけに関心を向けていればよいのか。次々に疑問が浮かんでくる。

笹月静(ささづきしずか)氏。国立がん研究
センター がん予防・検診研究センター予防
研究部部長。博士(医学)。1996年、熊本大
学医学部卒業。2000年、九州大学大学院
予防医学講座博士課程修了。同年4月より
国立がん研究センターへ。リサーチレジデン
ト、研究員、室長を経て、2013年より現職。
おもな研究分野は公衆衛生学、健康科学、
疫学・予防医学。

そこで、これら数々の疑問を、発がんのリスクや、がんの予防医学などに詳しい専門家に投げかけてみた。応じてくれたのは、国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部長の笹月静氏。同研究部は、今回のIARCの発表を受け、日本人の赤肉や加工肉の摂取とがんのリスクの関係性を解説した「赤肉・加工肉のがんリスクについて」を発表。笹月氏はこの解説の作成に従事した。

前篇では、国際がん研究機関の今回の発表がなにを意味し、私たち消費者がどう受け止めればよいのかを聞くことにする。後篇では、日本人を対象にしたこれまでの研究結果から、日本人は赤肉・加工肉の摂取を心配すべきなのか、発がんのリスクのなにを気にかければよいのかを聞く。

今回が初の指摘ではない

――国際がん研究機関(IARC)が、10月に「赤肉と加工肉の摂取の発がん性」について報告をしました。加工肉について「人に対し発がん性がある」、赤肉については「おそらく人に対し発がん性がある」とする内容だと聞きます。そもそも、この報告は、どのような経緯でなされたのでしょうか?

笹月静部長(以下、敬称略) 発表をした国際がん研究機関(IARC)は世界保健機関(WHO)の附属機関で、年3回「IARCモノグラフ」という調査報告書を出しています。各号では、たとえば「放射線」や「職業上の被ばく」といった特定のテーマを設けています。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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