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加工肉でがんになる?本当はどんな報告だったのか ~誤解だらけの加工肉・赤肉問題(前篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2016年02月18日

テーマごとに専門家が募られ、入手可能な世界中の論文をもとに、どのくらい論文の結果が一致しているかなどから、発がんの確実性を判定しています。

最新の「モノグラフ」第114号のテーマが「赤肉と加工肉」だったため、今回、肉の摂取のヒトに対する影響が取り上げられました。そして、10月の発表に至ったわけです。

――赤肉や加工肉と発がんの関係性について、研究者たちは初めて指摘したことなのですか?

笹月 いえ。今回初めて指摘したようなことではありません。

たとえば2003年には、世界保健機関と国連食糧農業機関(FAO)が共同で「食事、栄養及び慢性疾患予防」について報告しています。その中でも、「確実」「ほぼ確実」「可能性あり」「不十分」という4段階で関連性を設定する中で、加工肉と大腸がんの関連性については2番目の「ほぼ確実」とし、「なるべく加工肉は摂らないように」と書いています。

また2007年には、世界がん研究基金(WCRF)と米国がん研究機構(AICR)が共同で「食物、栄養、身体活動とがん予防」について報告しています。10項目の「勧告」の1つとして「動物性食品」を取り上げ、「肉(牛肉、豚肉)の摂取を控える。加工した肉はできるだけ避ける」とし、個人に対しては「肉の摂取を週500g(18オンス)以下とし、加工した肉はできるだけ食べないようにする」ことを勧告しています。

これら過去の報告も、その時点で発表されていた世界中の研究をもとに、発がんの確実性を判定したものです。ですので、手法としては過去のものも今回のものも同じなのです。

今回の報告は行動指針を示すものではない

――これまでと今回の発表で、何か違いはあるのですか?

笹月 2003年や2007年のときの報告では、いま説明したように、目標や勧告といった形で、がん予防のためのガイドラインが示されています。これに対して今回の国際がん研究機構の報告は、発がんの関連性の有無の判定するだけに留まっています。この差は、それぞれの研究機関、報告書の持つ役割の違いからです。

発がんのリスクを評価するには段階があります。まず第1段階として、危険(ハザード)があるのか、あるいは予防効果があるのか、などが評価されます。次に第2段階で、がんになりやすい職業的な背景があるのかといったことを踏まえ、リスクや予防効果の評価がされます。そして、第3段階でようやく、どういう行動をとるべきかといった行動指針の評価がなされます。

2003年や2007年の報告は、第3段階の行動指針まで示すものでした。でも、今回の国際がん研究機関の報告は第1段階どまりのものです。実際どうすべきかといった行動は、今回の報告を受けて、各国がこれから決めるべき話なのです。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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