食の研究所

加工肉でがんになる?本当はどんな報告だったのか ~誤解だらけの加工肉・赤肉問題(前篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2016年02月18日

研究結果の一致度が評価される

――今回の国際がん研究機関の報告で、加工肉は「グループ1」、赤肉は「グループ2A」に分類されたと聞きます。これらの分類をどう考えたらよいのでしょうか?

笹月 今回で言うと、調査対象となった世界の研究のうち、加工肉については約3分の2の研究がリスクを上げる方向のものだったという結果から、「人に対して発がん性がある」とする「グループ1」に判定されました。赤肉については「おそらく人に対して発がん性がある」とする「グループ2A」に判定されました。

――グループは5つあるそうですが、発がんのリスクが「グループ1」はもっとも高く、「グループ2A」は次に高いということなのでしょうか。

笹月 いえ、そうではありません。この判定は「結果の一致度」を示したものであり、決して「リスクの高さ」を示すものではありません。

もし、リスクの高さについて言うならば、「加工肉をたくさん食べる人が大腸がんになる確率は、食べない人に比べて何倍」といった話になりますが、このグループ分けはそういう話ではありません。あくまで今回で言うと、世界中の研究の約3分の2が、「加工肉の摂取が大腸がんのリスクを上げる」という方向で一致しているという話です。それだけ一致しているということは、加工肉の摂取と発がん性になんらかの因果関係があるという結論に至ったわけです。

たとえば、「グループ1」に分類されているもののなかでも、喫煙に起因する全世界のがん死亡は年間100万であったのに対し、アルコールは60万、加工肉は3万4000人であったことが示されています。

また、赤肉については、これまでの世界の研究のうち、半分ほどがリスクを上げる方向で一致したということです。それと、牛肉などの赤肉には鉄分が含まれていて、これが酸化・抗酸化の点では酸化する方向に働くといったような、発がんに寄与する可能性が加味され、「おそらく発がん性がある」を意味する「グループ2A」に分類されたのです。

50グラム以上は危険という誤解

――もう1つ、今回の国際がん研究機関の発表では、「加工肉では1日50グラムの摂取につき18パーセント、赤肉では1日100グラムの摂取につき17パーセント、大腸がんのリスクを高める」ともしていますね。

笹月 ただし、これについても多くの方の誤解を呼んでいるようです。「加工肉は1日の摂取量50グラムまでは大丈夫だが50グラムを超えると危険」とか、「赤肉は摂取量100グラムまでは大丈夫で、100グラムを超えると危険」と捉えている人もいるようですが、それはまったくの誤解です。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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