食の研究所

日本人には食事より気にすべき「がんリスク」がある ~誤解だらけの加工肉・赤肉問題(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2016年03月17日

20160317_kenkyusho_main

国際がん研究機関(IARC)が10月、ハムやソーセージなどの加工肉を「人に対し発がん性がある」、また牛肉や豚肉などの赤肉を「おそらく発がん性がある」と発表した。普段これらの肉に親しんできた人の中には、衝撃をもって受けとめた人もいるだろう。消費者が買い控えをしたり、食肉企業が沈静化を求めるコメントを発表したりと、波紋が広がっている。

私たちはこの報告をどう受け止めればよいのか。食べてきた肉に今後どう接すればよいのか。そもそも、がん予防のためにどんな食生活をすればよいのか。

これら疑問の数々を、がんの予防医学などを研究する専門家に前後篇で投げかけている。

応じてくれているのは、国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究部長の笹月静氏だ。同研究部は、今回の国際がん研究機関の発表を受け、日本人の赤肉や加工肉の摂取とがんのリスクの関係性を解説した「赤肉・加工肉のがんリスクについて」を発表。笹月氏はこの解説の作成に従事した。

笹月静(ささづきしずか)氏。国立がん研究
センター がん予防・検診研究センター予防
研究部部長。博士(医学)。1996年、熊本大
学医学部卒業。2000年、九州大学大学院
予防医学講座博士課程修了。同年4月より
国立がん研究センターへ。リサーチレジデン
ト、研究員、室長を経て、2013年より現職。
おもな研究分野は公衆衛生学、健康科学、
疫学・予防医学。

前篇では、今回の国際がん研究機関の報告内容を整理した。聞き慣れない表現が、少なからぬ人びとに誤解を招いているようだ。

たとえば、加工肉で分類された「グループ1」は「最もリスクが高いグループ」ではない。正しくは「これまでの研究結果の一致度」により判定されるもので、グループ1に分類されたことは、「因果関係があるとみなすのに充分といえるほど疫学研究の結果が一致していた」ことを意味するという。

今回の報告内容は、世界中の過去の研究から導き出されたもの。一方、日本人のみを対象に食事と発がんの関連性について調べた研究も行われている。笹月氏もそうした研究やその評価を行ってきた。

そこで後篇では“日本人について言えること”を、聞いていくことにする。肉の摂取を心配することに、どのくらいの重要さがあるのだろうか。

加工肉:「最高群」リスクは「最低群」の1.17倍

――日本人を対象とした食生活と発がん性の関係について研究をしてきたと聞きます。

笹月静部長(以下、敬称略) はい。がん研究センターの研究を含む日本人の食事と発がん性についての研究結果を、私たちと各研究機関・大学の研究者が総合的に評価して、2014年に「Meat Consumption and Colorectal Cancer(肉の摂取と大腸がんリスク)」という論文にして発表しています。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
食の研究所はこちらhttp://food.ismedia.jp/

食の研究所 バックナンバー

おすすめ記事

関連タグ

飲食店経営に役立つ!ノウハウBook無料配布中
メルマガ登録はこちら