食の研究所

日本人には食事より気にすべき「がんリスク」がある ~誤解だらけの加工肉・赤肉問題(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2016年03月17日

大腸がんでは肉より飲酒の方が重大

――今回の国際がん研究機関の報告を受けて、人びとの関心は加工肉や赤肉ばかりに行きがちですが、他にもがんとの関連性が考えられる因子はあるわけですね。

笹月 はい。私どもは、これまで日本人を対象として実施されてきた研究の結果から、各種がんに対する様々なリスクと予防要因を「確実」「ほぼ確実」「可能性あり」「データ不十分」に分けて評価しました。一覧表にもしています。

大腸がんについて言えば、肉の摂取よりも飲酒の方がよほど重大なのです。これまでの評価では、飲酒と大腸がんとの関連性は1番高い「確実」です。

また、肥満も、2番目に関連性の高い「ほぼ確実」です。一方、赤肉や加工肉の摂取は、3番目にあたる「可能性あり」です。

――逆に、大腸がんのリスクを下げると考えられる要因もあるのでしょうか?

笹月 はい。運動が大腸がんのリスクを下げるのは「ほぼ確実」です。ほかに、食物繊維の摂取やカルシウムの摂取はリスクを下げる「可能性あり」となっています。

――心のもちようとして、もしも、肉を食べてがんのことが心配であるなら、その分、運動をすればいいじゃないかと、と考えてもよいでしょうか?

笹月 もちろんです。とりかかりやすいところから、リスクを下げることをすればよいのです。1つのことに捕われるのはよくないと思います。

食事よりも気にすべきことがある

――より広い視点で、がん全体について捉えてみると、気にするべき発がんの要因はどういうものでしょうか?

笹月 日本人の場合、がん全体のリスク要因として最も重大なのは喫煙です。肺がん、胃がん、食道がん、膵がん、子宮頸がん、また、頭頚部や尿路系のがんなどで関連性の1番高い「確実」となっています。

がん全体で、次に重大なのは感染症です。がんの種類と関わっている感染症の原因はほぼ決まっています。胃がんとヘリコバクター・ピロリ菌、肝がんとB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルス、子宮頸がんとヒトパピローマウイルスなどです。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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