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日本人には食事より気にすべき「がんリスク」がある ~誤解だらけの加工肉・赤肉問題(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2016年03月17日

――がん全体と食事との関連性はどうなのでしょうか?

笹月 食事については、喫煙や感染症ほど関連性の高い要因ではありません。ただ、その中で言えば、塩分摂取は胃がんと「ほぼ確実」に関連性がありますし、熱い飲食物の直接摂取は食道がんと「ほぼ確実」に関連性があります。それと、野菜や果物を極端に食べないのもがんのリスクを高める方向に行きます。

あくまで喫煙や感染症と比べた場合ですが、バランスのよい食事を心がけていれば必要以上に神経質になることはありません。

6項目に目を向けたがん予防を

――食習慣も含め、がんの予防のために私たちはどんなことに気をつければよいでしょうか?

笹月 喫煙、飲酒、食事、身体活動、体型の維持、感染の検査という6つの項目について、それぞれ予防法があります。これまでの研究結果をもとに、確実性の高いものを抽出して6項目にまとめたものです。

生活習慣予防法・おもな具体的内容
1 喫煙 たばこは吸わない。他人のたばこの煙をできるだけ避ける。
2 飲酒 飲むなら、節度のある飲酒をする。1日あたり日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、焼酎や泡盛なら1合の2/3、ウイスキーやブランデーならダブル1杯、ワインならボトル1/3程度。
3 食事 偏らずバランス良く。食塩は1日あたり男性9g、女性7.5g未満、高塩分食品は週1回以内、野菜や果物を1日400g以上とる。熱いものを口にしない。
4 身体活動 日常生活を活動的に。
5 体型の維持 適切な範囲内に。適正はBMI値(中高年期男性は21~27、中高年女性は19~25)の範囲になるよう体重管理を。
6 感染の検査 肝炎ウイルス感染検査と適切な措置を。

がん予防のための6項目(参考:国立がん研究センターがん予防・検診研究センター予防研究グループ「日本人のためのがん予防法」をもとに筆者作成)

ちなみに、食事について、実は以前は肉についても「摂りすぎないように」といった内容を盛り込んでいたのですが、日本人のデータを見ているとさほど関連性が高くはないので、むしろ取り下げてしまったという経緯があります。

がん研究センターではほかに、40歳以上の方のご自身の生活習慣からすべてのがんや大腸がんなどのリスクをチェックできる「がんリスクチェック」も用意しています。

食事に「リスク0」も「確実にリスクを下げる」もない

――食事とがんなどのリスクについて、私たちが心に止めておくとよいことを最後に教えてください。

笹月 何事もそうですが、食事について「リスクが0」ということはありえません。また、確実にリスクを下げることのできる単一の食品や食事というのもありません。

普段、食事を連続的に摂っている結果として、リスクがどのくらいかは決まってきます。それに、いろいろな食べものを組み合わせて摂ることで、さまざまな成分の相乗効果も出るかもしれませんし、場合によっては相殺効果も起こるでしょう。

とかく日本人は気質上、リスクが0なのか1なのかを求めようとしがちな気はします。バランスよくいろいろなものを食べるのがよい。結局のところは、こういう言い方に落ち着くのです。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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