食の研究所

味がなくなるほど減塩、そこまでする必要あるの?~高血圧の95%はいまだ原因不明

佐藤 成美(サイエンスライター)  2016年05月19日

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「塩分を摂りすぎると高血圧になる」ということは誰でも知っていることだろう。かつては減塩がずいぶん取り沙汰されたが、いまはどうなのだろうか。

「食塩」と「高血圧」の関連は?

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食塩摂取量は1日25グラム近くあり、
高血圧者の割合が高かった。南部(広島県)
の食塩摂取量は約15グラムで高血圧者の
割合も半分程度だった。食塩をほとんど摂
取しないアラスカのイヌイットの人たちに
は高血圧がほとんどなかった。(参考:Men
eelyGR,DahlLK(1961)MedClinNorthAmをも
とに作成)

脂肪や糖などの摂りすぎを気にする人が増えている一方、最近、かつてほど減塩が騒がれないのは、「塩分イコール高血圧のもと」が人々に定着し、減塩が浸透しているからだろう。

この背景には、1970年代の減塩ブームがある。「塩は悪者」と刷り込まれて、しょっぱいものを食べるとなんとなく罪悪感にかられる。そんな人も多いことだろう。

減塩ブームは、まず1960年代に米国で起きた。きっかけは、1961年に米国のブルックヘブン国立研究所のルイス・ダールが疫学調査で、食塩摂取 量と高血圧の発症率に相関があることを示唆したことである(図参照)。減塩ブームは、日本にも広がり、食塩摂取量の多かった秋田県や長野県などで減塩運動 が行われたことはよく知られている。

しかし、ダールの疫学調査の後、ほかの科学者によりさまざまな動物実験や臨床調査が行われたが、再現性のある結果が得られなかった。科学的な根拠が 不明瞭なまま、「塩分を摂りすぎると高血圧になる」ということが、定説化した。減塩の必要性が明確なのは、腎臓疾患など一部の人のみである。

年々少なくなる日本人の食塩摂取量

食の研究所減塩

成人の食塩摂取量の平均値の年次推移。
2014年の食塩摂取量の平均値は10.0
グラムで、男女別では男性10.9グラム、
女性9.2グラム。この10年間で、総数、
男女ともに減少している。(参考:厚生労
働省「国民健康・栄養調査」(平成26年)
より作成)

たしかに日本人の食塩摂取量は多く、戦前は1日に20グラム近くも食塩を取っていたと考えられる。減塩ブームのころの、1975年の日本人の食塩摂 取量は男女とも1日あたり13~14グラムだったが、年々減少し、2014年の国民健康栄養調査によれば、成人の食塩摂取量は男性10.9グラム、女性は 9.2グラムだった(図参照)。

1979年に厚生省(いまの厚生労働省)が食塩摂取目標量を1日あたり10グラムと定めたが、食塩摂取量の減少にともない何度か見直され、2015年には、1日あたり男性で8.0グラム未満、女性7.0グラム未満に引き下げられた。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。

<記事提供:食の研究所
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