食の研究所
佐藤 成美(サイエンスライター) 2016年09月20日
展示ブースには大型から小型までさまざまなプリンターが並ぶ。基本的な構造はみな同じで、プリンターに食品素材をトレイに載せ、トレイ単位で印刷する。
食品工場のラインにも組み込める業務用のものは、ベルトコンベア上にセットし、連続的に印刷する。60センチもの幅まで印刷できる大型のものは、まるでポスターを印刷する大判プリンターのようだ。大型の装置は印刷幅を広げたり、高速化したりすることで印刷の効率化を図っている。
小型の装置の大きさは、A4サイズを印刷する一般的なプリンターとあまり変わらず、狭いスペースにも置ける。12センチの厚さの食品に印刷できるタイプもあり、パンやロールケーキなど厚みのある食品に印刷できる。小型の装置は値段も手ごろで、小ロットの印刷ができるので、小規模な製菓工場などに普及している。
東京ビッグサイトで開催された
「パティスリー&ブーランジェリージャパン」
フードプリンターを製造販売するマスターマインド東京支店マネージャーの青木義典さんは、「インクジェット式のフードプリンターは10年以上前から開発していましたが、食べ物への印刷は消費者に抵抗感があり、あまり普及しませんでした。ところが、近年は消費者の意識が変わったのか、プリントした食品が受け入れられるようになり、プリンターの売り上げが伸びています」と話す。
同社は衣食住に関わるさまざまなプリンターを開発しており、たとえばお墓に立てる卒塔婆に印刷するプリンターなどユニークなものがある。フードプリンターもそうした1つだった。近年ではフードプリンターを製造販売するメーカーも増えているが、早くから販売している同社の製品は、和洋菓子店などでは7〜8割のシェアを占めているという。
「和洋菓子店のお祝いなどの文字入れは手作業でしたから、大量の注文が入れば寝る暇もなかったといいます。フードプリンターによって、楽になったという声をよく聞きます。これからは、どの和洋菓子店でもフードプリンターを使うのが普通になると思います」と青木さんは続けた。
食品プリントは、結婚式の引き出物や七五三などのお祝いに加え、イベントや企業のノベルティグッズなどへの需要が増えると見込まれている。今後、フードプリンターがさらに普及するのは間違いないだろう。
また、小型で安価な装置が出回っているので、個人でフードプリンターを購入する人も現れるだろう。今やパソコンやプリンターが普及し、年賀状や名刺を個人で印刷するのは当たり前だ。これからは、自分でフードプリンターを使って印刷し、食べ物をデザインする時代がやってくるかもしれない。
佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「
<記事提供:食の研究所>
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