食の研究所

「遺伝子組換えでない」と言える混入率は何%まで?~「遺伝子組換え表示」改革を巡る消費者と生産者のせめぎ合い

佐々 義子(NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事)   2018年03月23日

しかし、産業界などからは、17年間違反なくこの表示制度が守れたのは、閾値が5パーセントという実現可能な値であるためだという声も上がった。5パーセントルールのもと、分別流通管理のためにコストをかけている事業者は、少しでも混入率の少ない食品を消費者に届けることができたのだという意見も出た。

食品メーカーにとって、栄養成分表示、原料原産地表示、今回の遺伝子組換え表示と毎年、表示の仕方が変わることへの対応の負担は、猶予期間があっても小さいものではない。ゼロという厳しい基準になったら、中小の豆腐屋さんや煮豆を扱う惣菜屋さんは対応できるだろうか。世界中から原料を調達して安定供給を実現している大企業にとっても負担であることは違いない。

検討会では「遺伝子組換えでない表示がなくなり、不分別表示だらけになるのは消費者に利益をもたらすのか」「遺伝子組換えでないという表示を選んでいた消費者は、分別・不分別という新しい表示方法に混乱するのではないか」「だれもがいつでもどこでも、同じ結果が得られるような検出方法はあるのだろうか。どうやってその方法を決めるのか」「高くてもゼロを目指すケースと不分別ばかりになったら、少しでも遺伝子組換えが少ないものを安く買いたいという消費者の要望に応えられない」などの意見が出た。

一方、消費者団体から「遺伝子組換えでないという表示のせいで、(5パーセント未満の範囲で)遺伝子組換え作物が使われている実態が伝わらなかった」「分別流通管理をしている事業者の努力を評価する。努力が消費者に伝わる表示制度がいい」「消費者団体も分別の意味を勉強していきたい」などの発言があった。

次回の検討会は3月14日だ。この検討委員会は年度内でとりまとめを行うことが、発足時から決まっている。

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2月16日に実施された第9回遺伝子組換え表示制度に関する検討会の様子。(筆者撮影)

「0パーセント」をめぐる動向などを注視

17年前、遺伝子組換え食品の表示が始まったとき、制度設計を担当した人たちは「不分別」表示食品が多く出回ると予想した。しかし、大手メーカーは分別流通管理にコストをかけて「遺伝子組換えでない」表示をする戦略を選んだ。現在では、生活協同組合(COOP)やイオンが不分別表示をしたプライベートブランド製品を多く販売し、安くて売り上げもよい。

もし、αが0(パーセント)となったら、たしかに表示は実態に近くなるが、それは消費者が求める情報を提供する表示なのだろうか。多くの消費者に「不分別」の意味が理解されていない中で、「分別」という言葉は適切な表現なのだろうか。事業者はゼロの原料を求めていくのだろうか。

事業者と消費者の対応への「予測」の上に行われる検討の行方を注視していきたい。

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執筆者プロフィール

佐々 義子(NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事)  

(さっさ・よしこ) NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事。博士(生物科学)。NPOでは、バイオテクノロジーと人々の暮らしを切り口にしたサイエンスコミュニケーションの実践と研究を行っている。ことに「バイオ」に特化したサイエンスカフェ「バイオカフェ」を企画、実施してきた。神奈川工科大学客員教授。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。

<記事提供:食の研究所
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