食の研究所

「無添加」「不使用」に安易に飛びついてはいけない~山崎製パンが実証、「強調表示」を巡る知られざる真実とは~

佐々 義子(NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事)   2019年08月27日

では次に、イーストフードはなぜ使うのか。パンを膨らませるのは、イースト菌が糖分を分解して発生させる炭酸ガスによる。イーストフードは、イースト菌の生育に必要な栄養素である窒素、リン、カリウムのうち、パン生地に十分含まれていない窒素源となるものである。同時に、水質改善やpH調整作用により、パンの骨格をつくるグルテンの形成を進め、パンの風味や香り、食感、ボリューム感、ソフトさなどを向上させ、安定して品質のよいパンをつくる働きをする。これも厚生労働大臣に認められた食品添加物である。

イーストフードと乳化剤は、消費者に安全でおいしいパンを届けるために必要であると認められた食品添加物であり、これらが添加された食品では、商品選択に資する情報としてその使用が表示されている。一方、これらが使われていないことを強調する表示が「イーストフード、乳化剤不使用」である。

消費者の食品添加物への不安視、減少傾向も

日本の消費者には「自然であること」や「天然であること」に価値を見出す人が多く、「無添加、無農薬、非組換え」と表示された食品を好む傾向がある。近年の傾向はどうだろう。

2004年度の食品安全委員会「食品安全モニター・アンケート調査」の結果によると、食品添加物に対して「とても不安を感じる」「ある程度不安を感じる」と回答した人の合計は76.4%で、リスクを感じるものの順位としては5位だった。その後2009年までの間、順位は5位から7位にあり、不安を感じる人の率も徐々に減っていき、最新の2017年度は39.6%、順位は12位となっている。

また、2017年11月、日本食品添加物協会が公表した「食品添加物認識・意識消費者基本調査」では、「“○○○無添加”・“○○○不使用”が表示された食品は、食品添加物○○○を使用した食品より安全であると思いますか?」の問いに、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人は約50%という結果であった。

“○○○”を使った食品より安全である。

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「“○○○無添加”・“○○○不使用”が表示された食品は、食品添加物○○○を
使用した食品より安全であると思いますか?」への回答。男女15〜74歳の食品購入
経験者計1600人を対象に、2017年10月31日〜11月2日に実施したウェブアンケート
調査による(次のグラフも同様)。(参考:日本食品添加物協会「食品添加物認識・
意識消費者基本調査」より作成)

執筆者プロフィール

佐々 義子(NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事)  

(さっさ・よしこ) NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事。博士(生物科学)。NPOでは、バイオテクノロジーと人々の暮らしを切り口にしたサイエンスコミュニケーションの実践と研究を行っている。ことに「バイオ」に特化したサイエンスカフェ「バイオカフェ」を企画、実施してきた。神奈川工科大学客員教授。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。

<記事提供:食の研究所
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