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「無添加」「不使用」に安易に飛びついてはいけない~山崎製パンが実証、「強調表示」を巡る知られざる真実とは~

佐々 義子(NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事)   2019年08月27日

さらに同調査では、食品添加物は国に認められていることと、食品添加物不使用と表示した食品には同一の成分や同じ機能を持つ成分が含まれていることをアンケート回答者に伝えた後、「優良誤認を招くような無添加や不使用表示をもっと規制すべきと思いますか?」と問うたところ、「そう思う」「ややそう思う」と答えた人は60%だった。

優良誤認を招くような無添加や不使用表示をもっと規制すべき

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優良誤認を招くような無添加や不使用表示をもっと規制すべきと思いますか?」への回答。
(参考:日本食品添加物協会「食品添加物認識・意識消費者基本調査」より作成)

しかし、食品添加物は国が許可していることを知っている人は48%で、「“○○○無添加”・”○○○不使用”が表示された商品」を「とても良く買っている」「買うことがある」人は合わせて59%もいる。

無添加をセールスポイントとする企業の戦略は、ある程度、功を奏しているのかもしれない。しかし、食品添加物というだけで不安視する傾向は減ってきており、無添加の表示によるミスリードを正そうとする動きも出てきている。実際に、5月30日、消費者庁で行われた食品添加物表示制度に関する検討会で意見を述べた5つの消費者団体は、「無添加表示」に否定的であった。

「代替物質の使用」を指摘する山崎製パン

このような状況において、山崎製パンは「『イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示に関する当社の見解」として、以下の2点を要点に挙げている。

ひとつは、代替物質の使用という実態があることだ。

品質のよい食パンづくりに欠かせないイーストフードや乳化剤を使わない代わりに、表示義務のある食品添加物以外で、同じ働きをする物質が使用されている実態があるという。

たとえば、乳化剤(モノグリセライド、ジグリセライド)を使用せずに柔らかいパンをつくる方法のひとつとして、パンの原料である油脂に脂質分解酵素(リパーゼ)を作用させて、モノグリセライドやジグリセライドを生成させる方法がある。加えられたリパーゼなどの酵素は(加熱して活性を失わせれば)食品添加物としての表示義務はない。最終製品にモノグリセライドやジグリセライドは検出されているが、「乳化剤不使用」と表示できるのだ。

また、イーストフードを使用しない場合は、原料である小麦に含まれるタンパク質やペプチドに、分解酵素(プロテアーゼ)を作用させることでできたアミノ酸を窒素源としている。さらに、水の硬度調整やpH調整のため、炭酸カルシウムマグネシウムを含む天然鉱物のドロマイト、また乳由来のタンパク質やペプチドが用いられている。

このように、イーストフードや乳化剤と同等の成分は最終製品に含まれているのに、食品添加物として加えていないからといって、「不使用表示」をするのは消費者への適切な情報提供といえるだろうか。

もうひとつは、消費者の誤認を拡げるおそれへの懸念だ。

おいしいパンを消費に届けるために欠かせないイーストフードや乳化剤は、安全性・有効性が国によって認められている。山崎製パンは、不使用表示を通して、イーストフード、乳化剤をはじめとする食品添加物への誤解の広まりを抑えることも他社に呼びかけている。

事業者の毅然たる見解に意義

山崎製パンはこの見解を「イーストフード、乳化剤不使用』等の強調表示について」としてウェブサイトのトップページでも示している。事業者が毅然として正しい科学を伝え、消費者とともに科学技術と健全につきあっていく方向性を示したことの意義は極めて深い。

なお、日本食品添加物協会も、20181月に「『無添加』、『不使用』表示に対する見解」を公表し、「無添加」「不使用」表示の自粛を要請しているので、参考にしていただきたい。

執筆者プロフィール

佐々 義子(NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事)  

(さっさ・よしこ) NPO法人 くらしとバイオプラザ21 常務理事。博士(生物科学)。NPOでは、バイオテクノロジーと人々の暮らしを切り口にしたサイエンスコミュニケーションの実践と研究を行っている。ことに「バイオ」に特化したサイエンスカフェ「バイオカフェ」を企画、実施してきた。神奈川工科大学客員教授。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。

<記事提供:食の研究所
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