企業のペーパーレス入門

電子帳簿保存法の基礎知識(前編)~企業会計を支える“国税関係書類の電子化”

市川琢也(辻・本郷税理士法人)  2014年10月08日

 近年、企業活動において、「エコ活動の推進」は重要な課題となってきました。また、それと同時にコスト削減や業務効率化も常に求められています。これらの課題に、企業の会計処理の面から取り組むことを目的とした法律が、1998年に施行されました。それが帳簿書類の電子化について定めた「電子帳簿保存法」です。メリットの多さから導入企業も着実に増えてきていますが、まだこの法律の内容がよくわからず、導入に踏み切れていない企業が多いのも事実です。実際、私が所属する辻・本郷税理士法人の顧客先企業6500社の多くが電子化に興味は持っているものの、事例としては少ない状況です。

 そこで本コラムでは2回に分けて、電子帳簿保存法の内容を振り返りつつ、実際の運用方法やメリット・デメリット、さらにはエコ活動への貢献について触れていきたいと思います。

誕生の背景

 まず、企業は基本的に法人税法や所得税法において、7年間は帳簿や書類などの国税関係書類を保存する義務があります。ただ、組織が大きくなれば1年間の取引量も多く、帳簿や書類も膨大となります。場合によっては保管用に倉庫を借りるなど、維持費がかかっている企業も多いのではないでしょうか。それがITの進歩に伴い、電子による国税関係書類の保存も可能になったという背景を踏まえて、電子帳簿保存法は作られました。国税側のニーズというよりは、企業側のニーズとして作られたのです。

 ちなみに、正式名称は「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」といいます。

「国税関係書類」とは

 では、保存義務のある“国税関係書類”とは何かを見てみましょう。大きくは、「帳簿」と「書類」に区分されます。「帳簿」とは、仕訳伝票や勘定科目の元帳、仕分け日記帳など、決算資料を作るための根拠となる資料などです。つまり、会計決算書に直接的に影響する書類のことです。端的にイメージしやすいのは、一般的な会計ソフトで入力しているデータと考えて間違いはないでしょう。

 一方の「書類」は、注文書(発注書)や納品書、請求書など、仕分けを起こすための元となる書類を指します。また、棚卸表や貸借対照表、損益計算書といったいわゆる決算書なども「書類」に分類されます。これらすべての帳簿と書類には原則として7年間の保存義務があります。

保存方法と申請について

  次に、電子帳簿保存法で認められている保存方法について触れましょう。大きくは①「電磁的記録」、②「マイクロフィルム(COMまたは撮影)」、 ③「ス キャン文書」、④「電子取引の取引データ」の4種類があり、「帳簿」か「書類」かによって認められる保存方法が違ってきます(下図参照)。

 また、「電子取引の取引データ」「マイクロフィルム(撮影)」以外は、基本的には所轄税務署へ申請し、承認を得なければいけません。ただし、帳簿と書類は同時に電子化する必要はありませんので、導入しやすい部分から電子化することができます。

※1「電磁的記録」…情報(データ)それ自体あるいは記録に用いられる媒体のことではなく、一定の媒体上にて使用し得る(一定の順序によって読みだすことが できる)情報が記録・保存された状態にあるものをいいます。具体的には、情報がフロッピーディスク、コンパクトディスク、DVD、磁気テープ等に記録・保 存された状態にあるもの。
※2:保存可能な年数に指定あり。
※3:3万円以上の契約書・領収書についてはスキャン文書での保存不可。

参考:国税庁「電子帳簿保存法Q&A」「帳簿書類の形態別保存の可否一覧」

執筆者プロフィール

市川琢也(辻・本郷税理士法人) 

税理士。平成20年辻・本郷税理士法人入所、平成23年税理士登録、平成25年10月より公益法人部部長。公益法人制度改革のプロジェクトを担当し、チームで約400法人のコンサル業務を管理した。(全社では約1,000法人関与)
現在は、新人育成、社会福祉法人の支援業務など幅広く業務をしている。


辻・本郷税理士法人
平成14年4月設立。東京新宿に本部を置き、国内36拠点、国外3拠点を展開する、国内最大規模を誇る税理士法人。全スタッフ数720名、うち公認会計士・税理士(有資格者含む)が約269名(グループ会社含む)<平成26年8月現在>。
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