レポート

FOODIT TOKYO 2019総まとめ~発想の転換が、外食産業の10年を創る

2019年09月26日

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9月25日に開催された、外食産業の未来を考えるカンファレンス『FOODIT TOKYO 2019』。外食やIT関連の豪華な顔ぶれの登壇者たちが一同に集結し、これからの飲食業界への提言を行った。会場は約1,000人の来場者が集まり、立ち見も出る盛況ぶり。詳細なレポートは後日に改めるが、当日の模様をダイジェストでお届けする。

10年先を考えながら、明日から役立つヒントも

■登壇者

・株式会社トレタ 代表取締役 中村仁氏
・株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長 秋元巳智雄氏
・カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長 楠本修二郎氏
・株式会社カゲン 代表取締役 子安大輔氏

オープニングではFOODIT TOKYO実行委員長の中村仁氏(株式会社トレタ代表取締役)とアドバイザリーボードを務める各氏による全セッションの見どころ紹介が行われた。5回目の開催にして初の試み。来場者にとっては、同時進行で進むセッション選択の参考になったことだろう。

人口減少による人手不足の一方で増加するインバウンド需要、国際的なSDGs(持続可能な開発目標)の潮流といった変容する社会に、飲食店も発想の転換が求められている。「食の未来がITで変わるのは確かだが、ITは課題を解決するさまざまな方法論のひとつにすぎない」と述べた中村氏。「10年後目線は持ちつつ、明日から使える経営ヒントも持ち帰ってもらいたい。今日を未来が生まれる1日にしたい」としめくくった。

東西インバウンドの成功者は何を考えているのか~「ポストオリパラ」を見据えたこれからの戦略~見えるところは効果を、見えないところは効率を上げる

■登壇者

・株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長 秋元巳智雄氏
・がんこフードサービス株式会社 代表取締役社長 小嶋達典氏

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左から、がんこフードサービス株式会社 ・小嶋氏
株式会社ワンダーテーブル・秋元氏

増加の一途をたどる外国人観光客(インバウンド)。だが具体的にどう対応すればいいのかわからない飲食店もいまだ多いだろう。

「10、20年後、日本の人口の半分近くが外国人観光客という時代がやってくる」と語った秋元氏。運営する「鍋ぞう新宿東口店」は、「外国人に人気の日本のレストランランキング(トリップアドバイザー)」全国2位を受賞している。

また、小嶋氏が関西圏を中心に多店舗展開する和食業態の店舗は合計で年間約140万人の外国人客が来店する。「電話予約は客側、店側どちらにもストレス。Web予約を活用すべき」等、外国人客に選ばれる店作りのアドバイスが次々に飛びだした。

さらば「マッチョ」な経営スタイル~飲食ビジネスの新しい価値観~作って売る“だけ”から、未来へ継続させる時代へ

■登壇者

・カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長 楠本修二郎氏
・PIZZA 4PS CORPORATION CEO 益子陽介氏
・PIZZA 4PS CORPORATION COO 高杉早苗氏
・美食倶楽部ネットワークFounder/食べる通信リーグ 理事 本間勇輝氏
・かつお食堂 店主 永松真依氏

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奥から、カフェ・カンパニー株式会社・楠本氏
PIZZA 4PS CORPORATION・益子氏、高杉氏
美食倶楽部ネットワーク・本間氏
かつお食堂・永松氏

拡大路線、売上増を目指し人件費を切り詰め、原価を下げる経営に、行き詰まりや限界を感じたことはないだろうか。

「経営者である以上、儲けなくて良いということではない」としつつも楠本氏は、売上至上主義にとらわれない価値観の転換を提言。

ベトナムで16店舗の飲食店を運営する益子氏、高杉氏や、バスク地方に広がるシェアキッチン・ダイニングの日本展開に取り組む本間氏。また東京・渋谷でかつお節ごはん専門店を経営する永松氏らと共に示した、多種多様化する飲食店経営の考え方。

“マッチョ発想”からの脱却は、消費者、生産者にも新たな可能性が生まれることを示唆した。

スタッフのモチベーションを科学する~根性経営から脱却し、最強の組織を作る方法~満足度を数値化、分析して改善

■登壇者

・株式会社リンクアンドモチベーション カンパニー長 田中允樹氏
・株式会社ジリオン 代表取締役 吉田裕司氏

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株式会社ジリオン・吉田氏

飲食業界で共通課題となっている慢性的な人材不足、高い離職率。そんな中で創業から急成長を続けているのが「大衆ビストロジル」などを手がけるジリオンだ。

「従業員はみんな家族なので、その成長をサポートするのが組織風土」と語る吉田氏。ES(従業員満足度)とCS(顧客満足度)の見える化に取り組み、リンクアンドモチベーション社が提供するITツールでESを、CSはミステリーショッパーの活用でそれぞれ数値化。データを分析して満足度の向上を目指している。

「企業の健全性、成長性をはかるのは、気合や根性といった精神論ではなく事実(ファクト)となる数字。見える化は経営者の使命で、定量的に見ずして意思決定はできない」

「肉業態」に未来はあるのか?~飲食ビジネスの持続可能性 (サステナビリティ) を考える~ 消費社会から循環型社会へ発想の転換

■登壇者

・株式会社カゲン 代表取締役 子安大輔氏
・株式会社門崎 代表取締役 千葉祐士氏

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株式会社門崎・千葉氏

国際的な考え方となりつつあるSDGs(持続可能な開発目標)を意識している飲食店経営者はどれほどいるだろうか。実は、無頓着なままでは今後、集客に悪影響が出かねない。店舗と生産者との持続可能性(サステナビリティ)の有無は、無視できない影響力を持ちつつある。

「たとえば近年ブームの肉業態。肉を他店より安く仕入れどこより安く売る未来に、何が待っているでしょうか」子安氏は、繰り返される安易な業態開発に警鐘を鳴らす。「日本の未来を作るのは飲食の仕事。様々なものを作る、クリエイター集団だと思う」と千葉氏。門崎熟成肉を手がけ、岩手の生産者と東京の消費者を食でつなぐ千葉氏の取り組みから、飲食ビジネスのサステナビリティの可能性を探った。

FoodTechが巻き起こす近未来飲食経営~技術とデータを活用した新しい経営手法~必要なITを見きわめ、取り入れる

■登壇者

・株式会社インフォマート 取締役 大島大五郎氏
・株式会社EBILAB 代表取締役 小田島春樹氏
・株式会社スマートショッピング 代表取締役 林英俊氏

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株式会社EBILAB・小田島氏

FOODIT TOKYOが始まって5年。業界だけでなく社会的にIT化は大きく進んだ。だが具体的に何をどうすればいいのか。そんな理由でIT化への第一歩が踏み出せない飲食店も少なからずあるだろう。

「世界的な食糧事情をみても今後食材は値上がりし続ける。仕入れ、原価をいかに押さえるかにも目を向ける必要がある」と語る大島氏。たとえばFAX発注をやめ、違う仕入先や価格でばらばらに買うムダ買いをなくすだけでも原価を下げることは可能だという。

在庫管理や発注を連携させ、IoTが自動発注するシステムもすでに実現している。「システマチックになる必要はないが、自店に必要なもの、何をしたいかという視点で考えてみては」

外食逆襲論~トレタの取り組みと飲食店の未来~ツールに振り回されないために顧客の視点に立つ

■登壇者

・株式会社トレタ 代表取締役 中村仁氏

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株式会社トレタ・中村氏

外食産業は成熟期を過ぎ、市場は今後縮小していくといわれて久しい。だが、「取り組み方、考え方でいくらでも可能性があるのが食の仕事」とする中村氏。

「2020年以降、外食産業は再構築され顧客の時代に変化する。業態や味の目新しさで新規客を消費してきた時代から、コミュニティや社会への貢献、リピート重視へ。顧客関係作りがポイントになってくる」

その視点からテクノロジーをみると、集客や予約管理、会計などバラバラに存在するITサービスにつながりはなく、オンラインとリアルとの連携もちぐはぐだ。顧客体験はもっと最適化できる。ツールに振り回されないよう、「顧客にどんな体験を提供したいか」を考え、そのために何をするかという考え方が大事だと訴えた。

飲食店の機能拡張 ~デリバリーやソーシャルダイニングは飲食店をどのように変えるのか?~個食の時代だからこその発想転換

■登壇者

・株式会社キッチハイク共同代表/COO 山本雅也氏
・Uber Eats 日本代表 武藤友木子氏
・株式会社トレタ 取締役兼執行役員社長室室長 吉田健吾氏

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左から、株式会社キッチハイク・山本氏
Uber Eats・武藤氏

たとえば東京都心の場合、全体の人口は増加しているものの、世帯あたりの人数は減少し、個食化が顕著だという。地方であれば人口そのものが減少している。こうした社会情勢の変化に飲食店は従来のあり方のままで対応できるのだろうか。

一石を投じたのが宅配代行の「Uber Eats」。立地や席数に制限があった飲食店も場所にとらわれず領域を拡張させることが可能となった。また、友人や職場仲間とは違う、一緒にごはんを食べる人を探したいという欲求に答えるサービスも登場。1人では入りづらかった店を訪ねる機会を生み出している。

CookTech最新事情~「調理×テクノロジー」はキッチンの現場をどう変える?~挑戦と非常識は調理を進化させる

■登壇者

・外村仁氏
・HAJIME オーナーシェフ 米田肇氏

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左から、HAJIME・米田氏、外村氏

シリコンバレーで機運が高まるフード事情を語ったのは、現地在住で「FoodとITの融合」をテーマに活動している外村仁氏。エンジニアたちは分子調理や真空調理、また美味しいと感じる味覚の数値化など、調理を化学の視点でとらえているという。

「日本の料理人の多くは技術を経験や勘にゆだね、レシピも公開しないが今、世界ではレシピの数値化、オープンソース化はあたり前」という。

一方日本で独自にそれらに取り組んでいたのは、ミシュラン史上最速で三ツ星を獲得した米田氏。ガストロノミーをベースにした進化型料理を提供する米田氏と外村氏が、非常識と挑戦、調理の化学的アプローチや、食のサステナビリティなど縦横無尽に語った。

未来総研2019 ~地方から生まれる、外食の新たな可能性~変わる豊かさの指標

■登壇者

・カフェ・カンパニー株式会社 代表取締役社長 楠本修二郎氏
・有限会社はたやま夢楽 代表取締役社長 小松圭子氏
・飯尾醸造五代目 飯尾彰浩氏
・株式会社トレタ 執行役員COO兼CRM事業本部担当 瀬川憲一氏

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左から、有限会社はたやま夢楽・小松氏
飯尾醸造・飯尾氏

例年大きな盛り上がりを見せるクロージングセッション「未来総研」。今回全体を通して語られた人口減やそれにともなう人手不足、インバウンド需要、サステナビリティといった時代の変化。飲食店に求められる発想の転換が、地方という新たな視点から改めて議論された。

「人口減少社会では、人口よりインバウンド人口が増えれば国は豊か。幸せに営みをしているか、楽しく交流しているかに豊かさの指標は変えるべき」と提言した楠本氏。

象徴のような事例が高知県の希少地鶏「土佐ジロー」を産業にし、人口20人の限界集落に年間3000人の観光客を呼ぶ小松氏の取り組みだ。また、京都府で酢の伝統製法を守る飯尾氏は「地元、丹後をバスクのサン・セバスティアンのように世界の美食家が詰めかける街にしたい」と意気込みを語った。

この他、恒例となった堀江貴文氏の時代の先を読み解く特別講演、ネット炎上やバックオフィス業務をテーマとした各セッションなど、紹介しきれていないものもある。毎年、飲食店におけるテクノロジーの最新動向をシェアしてきたFOODIT TOKYO。5回を数え、単純にITを語るだけでなく、より俯瞰的な視点から未来を見据えるカンファレンスとなった。時代はいやおうなく変化する。その変容にいかに対応すべきかのヒントがちりばめられた、熱い1日となった。


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