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飲食業界にも広がるサブスク(定額課金)サービスのメリットと活用法~串カツ田中は週3回の来店客も

2019年11月28日

月間平均来店頻度が1.86回に。現場のモチベーション向上にも

消費者にとっては大歓迎のサービスといえるが、店舗の利益は確保できているのだろうか。

「飲みパスはあくまで、来店のきっかけ作りという位置付けです。弊社は、お客様の通いやすさを考慮し、客単価はむしろ高まらないようにしています。その分、重視しているのが来客数です。これはテレビでいえば視聴率のようなもので、低くなれば飽きられているということを意味します。いかに来店頻度を上げていただくかを考えて取り組んでいるのです」(織田氏)

来客数を重視とはいえ、客単価も極端に下がるようなことはないという。

「まず、単純にドリンクオーダー数は増えます。2杯が3杯になれば、一緒に注文するフードメニューも増える可能性があります。1回で終わったかもしれない来店が2回になればトータルでプラスになります。結果として、店側も損することにはならないのです」(織田氏)

飲みパス会員であることが、来店動機につながることもあるだろう。店選びの時点で、同価格帯の競合店に対し優位になるのはいうまでもない。Web式を利用している会員の利用データ分析によると、月間来店回数は平均1.86回、最多で8回というリピーターもいた。

株式会社串カツ田中 営業本部 営業企画課 小林 秀一 氏

株式会社串カツ田中
営業本部 営業企画課 小林 秀一 氏

「これまで来店回数をカウントしたデータは存在しなかったので、これが多いかどうか、一概には言えません。ただ、現場の店長は、明らかに来店頻度が上がったと体感しているようです。『1.8回どころか、週3回ペースでお越しになるお客様もざらです』といった声もあります」(小林氏)

顧客のポジティブな反応に、現場は何より敏感だ。新規に購入してもらえば再来店につながる可能性がある。また、提示されればリピーターだとわかるので「いつもありがとうございます」と一言そえることができる。今は、最初のオーダー時に「飲みパスはお持ちですか?」と有無を確認し、会員でなければ勧めるようにしているという。

購入を見送った客にも、3杯目オーダーのタイミングで「今買えば元が取れて、次回以降もお得ですよ」と提案するなど、スタッフ自ら工夫して、会員数を増やしている。

「飲みパス会員の増加は、店舗売上だけでなく、スタッフのモチベーションアップにもつながっていますね。自分が売ったパスで、お客様がもう一度来てくださったという喜びが、自信になるようです」(小林氏)

サブスクで店舗のファンを可視化。継続にはサービスレベルの向上も

サブスクリプションには、顧客ロイヤリティ(ブランドへの信頼・愛着)を可視化する効果もある。飲みパス会員ということは、串カツ田中に月額500円支払っていいという意思表明ともいえる。顧客も、再来店時にパスを提示することで新規客とは違う扱いを受ければ、店への帰属意識が高まるだろう。「いい店だから」と客が客を呼ぶ循環が生まれる。

「いわばファンの可視化ができたのは大きいですね。例えば平均来店数が月1.8回であれば、メニュー変更もその頻度にあわせるなど、新たな企画をやらなきゃと考えるようになります。また、来店頻度が増えるということは接客もこれまで以上に大事になります。何かあれば解約につながってしまうので、メニューや企画だけでなく、現場スタッフの力も求められています」(織田氏)

Web式とカード式はそれぞれ一長一短ある。そのため、この2軸での展開は変えないという。

「Web式の壁はクレジットカード情報の登録です。お客様の利便性はカード式が圧倒的ですが、Web式は顧客データが得られます。あくまでお客様が使いやすいよう、カード式は残しつつ、今後は、Web式で得た顧客データを分析、活用していきたいですね」(織田氏)

利益率28%。顧客分析で来店頻度も向上した焼肉店29ON

『29ON』サブスクサービス:毎回5,000円でコース料理を提供(年会費14,000円)

29ONサブスクサービス
毎回5,000円でコース料理を提供(年会費14,000円)

西新宿本店をはじめ都内に4店舗を展開中の29ON(ニクオン)は、完全会員制の高級焼肉店だ。最新の低温調理機を使った「焼かない焼肉」を住所非公開の店舗で提供。

年会費1万4000円を支払った会員と同伴者だけが、毎回5000円で利用できる。会員は新規出店のたびに実施するクラウドファンディングで募集し、会員権はほぼ毎回、即完売する人気ぶりだ。

29ONの売上・費用

29ONの収支構造

完全会員制・完全予約制を貫くことで得られるメリットは大きい。メニューは飲み放題付きのコース1種類のみのため、食材の過剰仕入れや余分な仕込みは発生しない。廃棄ロスはほぼ0%だ。また、オペレーションが最小限で済み、来客数も事前に分かるため人件費も抑えられる。

店舗の収入は、料理や飲み物といった「モノ」への対価だけではない。ユーザーはプレミアム感のある会員権に「コト消費・トキ消費」として1万4000円という少なくない対価を払うのだ。

飲食代金以外の年会費を利益として見込めるため、経営改善への投資に全体の10%に相当するコストをかけても、 28%という利益率を確保できる。業界平均5%を大きく上回る状況は、会員制モデルの大成功事例といえるだろう。

会員データ分析に基づく対策で継続率UP

会員はスマホの専用アプリを通じて予約をするため、性別や年齢などの顧客データを詳細に記録できる。来店したすべての会員の来店回数や頻度、料理やドリンクの嗜好といった利用データが蓄積されるのだ。

顧客データがあれば、例えば年に1、2回しか利用していない会員に対し、継続的な案内で来店を促すこともできる。

来店回数や来店人数、来店の間隔を分析することで、誘客方法の改善に活用できるほか、在庫を適正に保つことも可能だ。あるいは、イベントやメニュー変更の際、「結局、限られた常連客ばかりになっていないか」「しばらく来店されていないお客様に適切にご案内できているか」といった振り返りもできる。

29ONでは、来店回数を増やして、継続利用率を高める努力を続けている。会員制のサブスクリプションモデルは、顧客が継続的に来店することで強みを発揮するからだ。

「ついで買い」でFLコストを吸収し、 売上拡大につなげるcoffee mafia

コーヒーマフィアのサブスクサービス『来店ごとに300円のコーヒー1杯無料(月額3,000円)』

coffee mafiaサブスクサービス
来店ごとに300円のコーヒー1杯無料(月額3,000円)

「日本初!定額制コーヒースタンド」を謳い、都内で3店舗展開するカフェ業態「coffee mafia(コーヒーマフィア)」。月額3000円で、来店のたびに通常300円のコーヒーが1杯無料になる。会員はひと月に10杯飲めば元が取れる計算だ。

コーヒーの原価率は一般的な相場が12%程度といわれるのに対し、同店は19%と決して安くはない。また、ハンドドリップで丁寧に淹れるため人件費もかかる。

実は、月間の来店回数を10~12回と想定した価格設定だったが、2016年10月のオープン以来、平均来店回数は月16~22回と想定以上。お得感を求めるユーザーは来店頻度が高まる。集客的に成功したとはいえ、当初の経営状態は厳しかったという。

コーヒーマフィアの売上・費用

coffee mafiaの収支構造

高いFLコストを吸収するのが、ローストビーフ丼や厚切りバタートーストなど、コーヒーの他に注文されるついで買いメニューの売上だ。顧客の利用時間帯や嗜好といったデータを分析し、メニュー開発に活用。現在では、サブスクリプションの収入と、ついで買いが売上の大半を占める。

今後は、高い来店頻度という特徴とデータ分析を活かしたアプローチで、さらなる展開も予定しているという。

店舗と顧客の持続的な関係にデータに基づく改善継続は必須

サブスクリプションモデルの急速な普及は、商品重視の時代から関係性重視の時代へと価値観が変化していることを示している。店舗と顧客との継続的なつながりが、今後ますます重要度を増すことは間違いない。

飲食店のサブスクリプションは、単純な顧客囲い込みに留まらない。本質は顧客を正しく知って改善に取り組み続ける点にある。顧客管理にアプリなどのツールを用いることで、これまで勘や経験頼みだった来店回数や注文傾向が可視化される。データに基づいたアクションやマーケティングが可能になるのだ。

これから顧客中心主義の飲食ビジネスへと踏み出す時代。第一歩として、サブスクリプションは心強い味方となるだろう。


BtoBプラットフォーム受発注

株式会社favy 代表取締役社長 髙梨巧

株式会社favy 代表取締役社長 高梨巧 飲食店向けのデジタルマーケティング総合企業。サブスクリプションサービスのコンサルティングを展開。自社でも2016年にサブスクモデル飲食店を開店し、「飲食店が簡単に潰れない世界」をつくるべく、飲食店経営のデジタル化に挑戦している。http://favy.info/subscription/about_service

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