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コロナショックを受けた飲食店が利用できる、資金調達のための緊急融資制度

2020年05月20日

コロナショックを受けた飲食店が利用できる、資金調達のための緊急融資制度

長引く新型コロナウイルスの影響を大きく受ける中小企業を守るため、厚生労働省は従業員の休業手当を助成する雇用調整助成金、経済産業省は持続化給付金といった支援策を打ち出している。

しかし、実際に助成金が手元に給付されるまでには時間がかかる。それまでの運転資金が危うい場合は、融資を受けて資金繰りを確保しなければならない。ただ融資制度もいくつもあり、結局何をどう申し込めばいいのか、どこからどれくらい借りることができるのか、整理がつかない状況もあるだろう。飲食業界に特化した財務コンサルティングを行っている株式会社ビーワンフードに、飲食店が受けられる支援策と、資金調達にあたっての準備ポイントを聞いた。

融資金額は半年分が目安。日本公庫・商工中金と信用保証協会が制度を実施

新型コロナウイルスの影響が長期に及ぶ場合を想定し、国は中小企業を守る支援策を次々示している。緊急経済対策は日々話し合われているが、緊急事態宣言も延長され、外出自粛がはじまってすでに2ヶ月たっている。休業で売上が見込めない状態でも固定費は出ていき、手元資金に不安を抱える事業者も少なくないだろう。ビーワンフードのコンサルタント鈴木康弘氏は「売上が半年くらいまったく立たない状態でも経営が持つくらいの金額が借り入れ金額の目安」とする。

「現在、様々な支援制度が打ち出されていますが、制度が決まっただけで実際は手続きがはじまっていないものもあります。そのようなものまで見ていくのは大変なので、大きく2つあります。ひとつ目が日本政策金融公庫(日本公庫)の『新型コロナウイルス感染症特別貸付』と商工組合中央金庫(商工中金)の『危機対応融資』、ふたつ目が信用保証協会の『セーフティネット保証・危機関連保証』、『民間金融機関における実質無利子・無担保融資』です」

実質無利子無担保となる日本公庫・商工中金の『新型コロナウイルス感染症特別貸付』

制度活用の流れと概要

日本政策金融公庫・商工組合中央金庫のコロナショック融資制度
 中小企業事業国民生活事業
個人営業法人営業
申込時に必要な書類 □ 借入申込書
□ 法人の登記事項証明書(原本)
□ 代表者個人の印鑑証明書(原本)
□ 納税証明書(最近2期分の法人税の税額証明、直近の消費税の未納税額がない証明
□ 最近3期分の税務申告書・決算書(勘定科目明細書を含む)
□ 最近の売上高が把握できる資料
□ 借入申込書
□ 新型コロナウイルス感染症の影響による売上減少の申告書
□ 最近2期分の確定申告書(一式)のコピー(青色申告の方は青色申告決算書、いわゆる白色申告の方は収支内訳書を含む)
□ 借入申込書
□ 新型コロナウイルス感染症の影響による売上減少の申告書
□ 最近2期分の確定申告書・決算書のコピー(勘定科目明細書を含む)
要件 最近1ヶ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少または同様の状況 次の1または2いずれかに該当する方

1.最近1ヶ月の売上高が前年または前々年の同期と比較して5%以上減少

2.業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の事業者、前年以降の店舗増加等によって単純な売上高等の前年比較では認定が困難な事業者は以下のいずれかと比較して5%以上減少
 a. 過去3ヶ月(直近1ヶ月を含む)の平均売上高
 b. 2019(令和元)年12月の売上高
 c. 2019(令和元)年10~12月の売上高平均額
担保 無担保

(出典)新型コロナウイルス感染症特別貸付の概要(日本政策金融公庫)

融資金額と金利

 中小企業事業国民生活事業
融資限度額 3億円 6000万円
金利当初3年 1.11% ⇒ 0.21% 1.36% ⇒ 0.46%
4年目以降 1.11% 1.36%
利下げ限度額 1億円 3000万円

※商工中金による『危機対応融資』は、中小企業事業と同内容。

「日本公庫の特別貸付は『国民生活事業』『中小企業事業』の2種類あります。どちらを選ぶかは、借りる金額によります。4000万円以上借りるなら中小企業事業を選ぶとよいでしょう。というのも、この特別貸付は、融資後3年目までの金利は基準利率から-0.9%になりますが、さらに特別利子補給制度によってこの当初3年分は実質無利子化※されます。その限度額が国民生活事業では3000万円、中小企業事業では1億円なのです」

特別利子補給制度の利用要件

 小規模事業者中小企業者
個人 要件なし
法人 売上高▲15%以上 売上高▲20%以上


売上高要件の比較は、貸付で確認する最近1カ月に加え、その後2カ月も含めた3カ月間のうちのいずれかの1カ月間で比較。

 中小企業事業国民生活事業
融資限度額 3億円 6000万円
金利当初3年 1.11% ⇒ 0.21%0% 1.36% ⇒ 0.46%0%
4年目以降 1.11% 1.36%
利下げ限度額 1億円 3000万円
補給対象上限 1億円 3000万円

※商工中金による『危機対応融資』は、中小企業事業と同内容。

特別利子補給制度では、正確には、いったん基準利率-0.9%の金利を負担して返済した後、申請後に別機関から支払い済み利子額が返還される。商工中金でも、日本公庫の中小企業事業と同じ内容で緊急対応融資を行っている。日本公庫と商工中金、両方に申し込むこともできるが、その際は特別利子補給制度で実質無利子化されるのは、日本公庫と商工中金の融資額の合計で1億円までとなるので注意が必要だ。

実質無利子無担保となる民間金融機関による信用保証協会の融資

資金使途・融資期間 運転資金10年以内(据置期間5年以内)
融資利率 融資期間に応じて1.8%~2.2%以内
(責任共有精度対象外の場合は、1.6%~2.0%)

融資限度額

無担保3000万円
利子補給 全額補給(※融資実行後3年間)
信用保証料補助 全額補助(売上高減少率により一部中小規模事業者は1/2)


『民間金融機関における実質無利子・無担保融資』は、以下の要件を満たした場合に利用できる。こちらも3000万円まで実質無利子で借入れできるので、融資希望金額に応じて、上記の日本公庫や商工中金の融資と併せて検討するといいだろう。

 要件
 国が補助を行う都道府県等による制度融資において、セーフティネット保証4号・5号、危機関連保証(下記「信用保証協会のセーフティネット保証」で詳述)のいずれかを利用した場合
申込時に必要な書類の一例
(自治体によって様式や必要書類は異なる)
□ 認定申請書2通
□ 商業登記簿謄本の原本
□ 企業概要
□ 最新の決算書(確定申告書) の写し
□ 売上高確認書
□ 月次試算表、損益推移表、損益計算書、売上台帳等
□ 実印

認定基準が緩和され利用しやすい信用保証協会のセーフティネット保証制度

制度活用の流れと概要

保証協会によるコロナショックのセーフティネット保証制度
申込時に必要な書類の一例
(自治体によって様式や必要書類は異なる)
□ 認定申請書2通
□ 商業登記簿謄本の原本
□ 企業概要
□ 最新の決算書(確定申告書) の写し
□ 売上高確認書
□ 月次試算表、損益推移表、損益計算書、売上台帳等
□ 実印

 
全国にある信用保証協会で、新型コロナウイルス感染症による影響を受けている中小企業・小規模事業者向けの保証制度を用意している。実質無利子で借入れできる日本公庫や商工中金からの融資では足りない場合に検討するといいだろう。

セーフティネット保証・危機関連保証内容(信用保証協会特別枠)

 セーフティネット保証
4号
セーフティネット保証
5号
危機関連保証
売上減少要件
(前年同月比較)
▲20% ▲5% ▲15%
融資限度額 合計で8000万円
(担保あり2億8000万円)
8000万円
(担保あり2億8000万円)
保証率 100% 80% 100%
業種指定 なし あり なし
保証料率 約1%以内 約1%以内 約0.8%以内
推奨使用用途 新規借入 借換 新規借入


信用保証協会が通常の保証限度額8000万円とは別枠で100%保証を行うセーフティネット保証

「信用保証協会が融資額を100%(セーフティネット保証5号は80%)信用保証することで、中小企業・小規模事業者が金融機関から融資を受けやすくなる制度です。協会の一般枠でも8000万円の保証を受けられますので、一般枠、セーフティネット保証、危機関連保証の合計で最大2億4000万円まで融資を受けることが可能です」

先程の無利子の3000万円は、セーフティネット保証、もしくは、危機関連保証の一部として扱われるので注意が必要だ。

借方過多を心配するのであれば、保証率が80%のセーフティネット保証5号は、すでに融資がある場合の借換としての用途を推奨するという鈴木氏。借換をすることで返済期間が延び、直近の負担を減らせるが、借換は同じ保証率でなければできない。一般枠の借り入れは基本的に保証率80%で行われているので、借換に向いているのだ。もちろん、4号認定まで取れず、借入れも必要な場合は、借換ではなく、通常通り融資を受けることも可能だ。

「保証認定は、本店登記のある各市区町村役場で取得できますが、現在問い合わせや申請が急増し、窓口や電話はかなり混雑しています。いわゆる3密を避けるため、対面が難しい状況なので郵送や金融機関経由で対応する自治体も出ています。申請に必要な書類や様式も自治体で違う場合があるので、自治体のホームページなどで確認するのがよいでしょう」

認定基準は3月に緩和され、より多くの事業者が保証認定を受けやすくなっている。緩和の対象となるのは以下の要件だ。

<認定基準>
1.業歴3ヶ月以上1年1ヶ月未満の事業者
2.前年以降の店舗増加等によって単純な売上高等の前年比較では認定が困難な事業者

緩和前
(前年と比較)
緩和後
(新型コロナウイルスの影響を受ける前などを基準として、a、b、cのいずれかで比較
最近1カ月の売上高等と前年同月比を比較

その後2カ月間(見込み)を含む3カ月の売上高等と前年同期比を比較
a 最近1カ月の売上高等と最近1カ月を含む最近3カ月間の平均売上高等を比較
b 最近1カ月の売上高等と2019年12月の売上高等を比較

その後2カ月間(見込み)を含む3カ月の売上高等と2019年12月の売上高等の3倍を比較
c 最近1カ月の売上高等と2019年10~12月の平均売上高等を比較

その後2カ月間(見込み)を含む3カ月の売上高等と2019年10~12月の3カ月を比較

 

「開店まもない店舗や、店を1店舗でも増やした事業者は、b.がおすすめです。もともと売上が落ちる2月、3月に比べて12月は忘年会シーズン等で売上が良い月なので売上の減少をわかりやすく示せます」 

自治体の窓口によっては、運用緩和が伝わっていない場合もある。書類の様式が前年同月比のままの場合があっても、制度上は上記のとおりなので交渉してみるべきだという。

「現場が混乱しており、情報が追いついていません。“そんな条件はない”と言われても説明すればちゃんと調べてくれます。また、店舗が増えていない事業者でも通ったケースもあるので、どの条件が当てはまるのか、ひと通り出してみるのがいいかもしれません」

売上高が20%減少していればすべての保証認定がとれる(セーフティ保証4号:20%減少、5号:5%減少、危機関連保証:15%減少)。鈴木氏はまとめてすべてとっておくことを勧めている。その認定を銀行などの金融機関に提出することで融資が受けられるしくみだ。認定の有効期限は取得から1ヶ月だが、期限が切れても再取得可能となっている。

また、各都道府県で独自の制度融資を行っている場合がある。たとえば東京都の場合、1.感染症対応緊急融資と2.感染症対応緊急借換の2つの制度を用意している。認定を取得したうえでこの制度を利用すれば、セーフティネット保証、危機関連保証の枠内での借入となり、1%程度発生する信用保証料を東京都が負担してくれるメリットもある。また、1億円までは3年間利子補給されるので、実質無利子となる。ただ、前述した実質無利子無担保となる民間金融機関による信用保証協会の融資3000万円を優先して使うことになり、これと合わせて1億円のため、実質的には7000万円分が実質無利子となる点に注意が必要だ。

似たような制度融資は各都道府県で用意されているので、併用することで有利になるようであれば利用を考えるといいだろう。融資を受ける優先順位は以下の流れで考えるとよい。

①借入は公庫もしくは商工中金からできるだけ多く行うようにする。
②本社所在地の市区町村で、できるだけ多くの認定を取る。
実質無利子無担保となる民間金融機関による信用保証協会の融資により借入を行うようにする。
④信用保証協会の特別枠は危機関連保証→セーフティネット保証4
号の順で借入を行うようにする。
⑤借入過多が心配であれば、セーフティネット保証5号で借換を行うようにする。
⑥各都道府県の制度融資を併用することで有利になるようであれば、併用する。

新型コロナウイルスの影響で大きな打撃を受けている事業者は、基本的に認定が通らないことはないという。売上高の減少を示す資料も、ざっくりとした試算表をエクセルで作成したものでもかまわない。資金ショートを起こさないために手元にしっかりと資金を確保することを最優先に考えていただきたい。


飲食店がコロナショックを乗り切るための緊急資金繰り対策と短・中期経営改革

株式会社ビーワンフード コンサルタント 鈴木 康弘 氏

2007年早稲田大学法学部卒業。同年、公認会計士試験に合格し、三大監査法人のひとつ有限責任監査法人トーマツに入社。製造業、サービス業、ホテル業など様々な業種の会計監査、内部統制監査やIPO業務に携わる。その後、IPO準備の通信会社にて経理マネージャーを務める。現在は、株式会社ビーワンフードで、飲食店の経営者と共に経営者のビジョン実現に向け、予算や出店計画作成、資金調達を含めたCFマネジメントを行い、社外CFOとしての役割を担っている。
https://www.beonefood.co.jp/

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