飲食・宿泊業を応援!新型コロナウイルス対策情報

休業手当は?勤怠記録は?飲食店が雇用調整助成金の申請で注意すべきこと

2020年06月24日

休業手当は?勤怠記録は?飲食店が雇用調整助成金の申請で注意すべきこと

新型コロナウイルスの影響による解雇などを防ぐ経済対策、雇用調整助成金。上限額が従業員ひとり1日当たり1万5000円に引き上げられ、申請手続きも計画書の作成提出が不要になるなど大幅に簡素化され、事業主がより活用しやすい制度へ整えられている。うまく利用すれば雇用側、従業員双方にメリットがある一方で、休業手当として支払うべき金額や助成金の入金期日が不明確なために、申請をあきらめてしまう経営者も少なくない。

特に小規模の飲食店は、日ごろの労務管理があいまいになりがちで、勤怠記録など必要書類の不備で申請手続きのボトルネックになっているケースが見受けられる。だが、国をあげた特例措置で過去に遡っての申請も可能な今、ぜひあきらめずに活用を検討してほしい。助成金の申請に詳しい社会保険労務士による、申請時に注意すべきポイントを解説する。

休業手当は平均賃金の6割以上。支給は事業主の義務

雇用調整助成金とは、今回のコロナ禍のように、やむをえず休業をする場合に休業手当などを支払いながら雇用を維持させる事業主に対して、休業手当などとして支払った金額の一部を国が助成する制度だ。

労働基準法では、会社側の都合で従業員を休業させた場合は、休業させた所定労働日につき平均賃金の6割以上の休業手当を支払うよう義務付けられている。2020年6月12日の雇用調整助成金制度拡充で、原則通り平均賃金の6割の休業手当を支給した事業主でも、あとから当時の休業手当に加算して休業手当を支払えば、追加支払いされた分に対しても助成の対象となることとなった。

 「今後の資金繰りを考えながらですが、従業員の皆様にいつもどおりの給与をお支払いいただきますと、最終的な助成額の見込みが拡がります。従業員の皆様にとっても有難いこととなりますので、すでに申請をされた事業主も再度見直しをしていただけるとよいかもしれません」

現在の飲食店は、行政からの休業要請を受けながら、従業員の雇用を守らねばならない苦しい立場にある。雇用調整助成金は労働者の失業を防ぐと共に、雇用を維持する企業の負担を和らげる仕組みといえる。

特例措置で助成金申請フローは簡素化

雇用調整助成金の活用にあたっては、「申請書類が多くて難しい」「申し込みが殺到していていつ給付されるかわからない」という声を聞いて諦めてしまう経営者が少なくない。現在、厚生労働省により新型コロナウイルス感染症特例措置を講じ、申請手続きの簡素化、助成率の引き上げ、対象労働者の拡大などの支援策を拡充している。主な流れやポイントは以下のとおりだ。

雇用調整助成金の申請フロー

20200622_koyoutyouseijoseikin_figure

※休業協定書のひな型『厚生労働省標準型フォーマット(Word版)』を本記事の下部に用意しています。

新型コロナウイルスの影響による特例措置

雇用調整助成金の助成率(小規模事業者)

◎雇用保険を受けていないアルバイト・パートも支給対象
◎従業員を解雇していない中小企業は助成率100%
◎上限額はひとり1日あたり15000円(月額上限33万円)
◎休業等実施計画届(計画書)は手続き簡略化で提出不要
◎短時間休業の場合は、従業員全員を一斉休業させなくとも申請可
◎事後での届け出が可能で、遡って申請できる

申請期限

申請期限は、支給対象期間の末日の翌日から2か月以内だが、ここも特例措置が施されている。

休業を始めた日助成金の申請期限
2020年1月24日~5月31日までの間 8月31日まで(特例措置)
2020年6月1日~30日までの間 7月1日~8月31日まで
2020年7月1日~31日までの間 8月1日~9月30日まで

多くの飲食店の課題は、記録がないこと

中小規模の飲食店経営者から雇用調整助成金の対応相談を受けている社会保険労務士飯田事務所の飯田保夫所長は、「日ごろの労務管理の不備が申請を困難にする場合がある」と指摘する。

20200622_koyoutyouseijoseikin_iidasi

社会保険労務士
飯田保夫氏

「特に、小規模店舗では、タイムカードや勤務表などの勤怠記録がない、就業規則もない、といった状況も少なくありません。助成金など行政の支援を受ける際には、それらがボトルネックになってしまいます」

労働条件が定まっておらず勤怠記録もない状態では従業員の平均賃金が算出できず、店舗の休業期間中にどれだけ休業手当を支払う必要があるのかがわからない。どれくらいの助成金がいつ入金されるのか、見通しを立てることもできないだろう。

「勤怠記録がない場合は、雇用調整助成金の申請を進めることができません。シフト表などを頼りに遡って作成する場合は、必ず事実に基づいた正確な内容にしてください」

従業員の勤怠記録を日ごろつけていない場合は、これを機に勤怠管理を整備したい。また、厚生労働省では小規模事業者(従業員が概ね20人以下や個人事業主)が簡単に申請書を作成できるフォーマットなども用意している。

「店舗の名称や所在地、代表者など記入できるところから埋めて書類の体裁を整えていくと、申請できそうだと手ごたえを感じるかもしれません。まずは

◎事業主が従業員に支払うべき休業手当の計算
◎助成額の見込みと入金時期の予定などの見積もり

と見通しを立て、安心材料をそろえて進めていくのがよいでしょう」

以下に、申請の際のポイントを順に解説する。

中小の飲食店が注意すべき申請書類と対応ポイント

【指定様式あり】

■雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書
■支給要件確認申立書・役員一覧等
■休業・教育訓練実績一覧表
■助成額算定書

【指定様式なし】

■事業所の状況に関する書類
■休業協定書
■労働・休日の実績に関する書類
■休業手当・賃金の実績に関する書類

出典:厚生労働省『雇用調整助成金ガイドブック』2020年6月12日

雇用調整助成金の申請で必要な書類は右記の通りで、いずれも厚生労働省のウェブサイト から入手可能だ。記載例もあるので、自社に即した内容に書き換えて用いればよい。

この中から、特に厚生労働省が用意した様式ではなく事業主が自ら用意する書類を抜き出し、注意すべきポイントを見ていこう。

 

書類(◎は助成金申請時に必須)ポイント
◎休業協定書 厚生労働省の様式を参考にして、自社に即した内容に書き換えて用いればよい。
休業協定書(厚生労働省標準型フォーマット)Word版休業協定書 厚生労働省標準型フォーマット(Word版)
◎事業所に関する書類 事業所の従業員数や資本額が分かる書類。既存の労働者名簿および役員名簿で可。
※中小企業の人数要件を満たす場合、資本額が分かる書類は不要。
◎労働・休日の実績に関する書類 従業員ごとの勤怠を記録した出勤簿やタイムカードなどで、休業させた日や時間が分かるもの。
◎休業手当・賃金の実績に関する書類 従業員ごとの給与明細、賃金台帳で、休業手当、賃金の額が分かるもの。
助成金支給申請書 フォーマットは数式などが入っており、比較的簡単に支給申請書を作成できる。小規模事業者向けは簡略化されている。
○労働条件通知書、雇用契約書 雇用調整助成金の申請時の提出は不要だが、従業員の勤務状況を明らかにするためにのちのち必要になる場合もある。作成漏れがある場合は作成して用意しておきたい。雇用契約書は社員だけでなくアルバイト、パート(学生含む)にも必要。
○就業規則 従業員10名以上の事業所は労働基準監督署へ届出をしなければならない。あとで提示を求められることがあるので、ない場合はすぐに作成しておく。

 

休業手当の計算では、労基法で定められている平均賃金の60%以上を支払う。

「平均賃金に関する計算方式がわからない場合は、最寄りのハローワークや労働局などで問い合わせることも可能です。しかし、行政機関では限られた相談時間の中で一社一社の事情に即した対応は難しいと思いますので、顧問の社会保険労務士事務所に相談するのがよいでしょう。その際は、給与明細書と勤怠記録をご用意ください」

また、6月12日から拡充された点を考慮しますと、例えば、月額給与の方でしたらいつもどおりの給料額を支払うことで、その全額が助成額となりますので、難しいとされる平均賃金を使わずに進めることもできるようになりました。いつもどおりの給与を支払うということでしたら、行政機関や専門家に相談をされなくてもお進めいただけるのではないかと思います。休業はすべての店舗を休業させずとも、営業できる店舗は営業をしていただくこと、つまり一部休業もこの助成金では認められております」

休業実態は事後調査が及ぶ場合がある

注意しておきたいのは、事実をねじまげた申請をしてはならないという点だ。実際は営業していたが休業と偽る、助成額が高くなるように給与明細を書き換えて休業手当額を実際とは異なる金額に操作するといった行為は、不正受給にあたる。

「雇用調整助成金は、届出どおりの休業が行われていたか事後に調査が入ることがあります。不正が発覚した際は助成されないだけでなく店名も公表されてしまうこともあるので、絶対に事実と異なる申請は行わないでください」

助成金は持続可能な経営基盤の足掛かりとして活用

雇用調整助成金は、正しい勤怠記録と営業記録があれば申請に必要な書類はそろってくる。ただ日頃から運営管理がしっかりできていないと、必要時に急に整えることは難しい。支給申請は、体制を内側から根本的に見直す機会ともいえるだろう。

「複数店舗を運営する企業になると、システムを利用して正確かつ容易に出せる環境が整っていたりします。売上や勤怠、仕入れ額などの管理には情報連携できるシステムを使う方が便利です。

たとえば東京都の場合、雇用調整助成金などを活用して非常時における勤務体制づくりなど職場環境整備に取り組む企業には奨励金を支給しています。そうした制度もうまく利用してほしいですね」

新型コロナウイルスの影響の長期化は避けられない今、雇用存続の命綱ともいえる雇用調整助成金を申請しない理由はもはやない。将来につながる経営の基盤固めの足がかりとして、ぜひチャレンジしてほしい。


全店舗の発注量・価格を把握するクラウド型受発注システム

社会保険労務士飯田事務所 所長 飯田保夫

社会保険労務士、ジョブ・カードキャリアコンサルタント、派遣元責任者。経済産業省認定経営革新等支援機関。2011年12月に社会保険労務士飯田事務所を設立。人事労務と経営変革を専門とし、経営計画策定及び実行支援、補助金・補助金活用・申請支援、就業規則等の社内規定策定などを行う。
https://nintei-sr.com/

飲食・宿泊業を応援!新型コロナウイルス対策情報 バックナンバー

おすすめ記事

関連タグ





メルマガ登録はこちら
フーズチャネルタイムズ 無料購読はこちら