外食企業のアレルギー対策

食物アレルギーとは?飲食店がお客様対応する上で押さえておきたい基本的なこと

今村慎太郎 (NPO法人アレルギーっこパパの会 理事長)  2020年10月14日

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2001年に容器包装加工食品のアレルギー表示が義務化されてから、約20年が経ちました。食品だけでなく外食でも アレルギー表示や食物アレルギーがある人への注意喚起を見かけるようになり、食物アレルギーがある人やその家族にとって、注意をするという点では生活しやすくなってきています。

一方で、事業者の中には 表示をすることが目的となり、そもそもこれらの情報を必要とする人たちや食物アレルギーに対する理解、知識が不足していると思われるケースがあります。そこで今回は、飲食店がアレルギー対応をするにあたり、押さえておいていただきたい基本的な内容をご紹介します。

食物アレルギーについて

食物アレルギーとは、特定の食べ物に含まれるアレルギー物質(「アレルゲン」 )に免疫機能が過剰に反応して様々な症状が引き起こされる疾患です。アレルゲンを含む食品は多岐にわたりますが、その70%は鶏卵、牛乳、小麦が占めています。特に低年齢ほど鶏卵、牛乳、小麦がアレルゲンになることが多く、年齢が上がるにつれて、甲殻類や果物が増えていきます。

発症経路は「食べる」だけではありません。「吸う」「触る」でも発症する場合があり、また、症状も、身体の一部にだけ現れる場合もあれば、全身に複数の症状があらわれることもあります。中でも「アナフィラキシーショック」は血圧の低下や意識障害が伴い命の危険にまで及ぶことすらあります。

 発症症状(一部省略)
皮膚症状 かゆみ、じんましん、むくみなど
粘膜症状 目の充血や涙、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、口の違和感など
呼吸器症状 のどが締め付けられる感じ、声がれ、咳、息苦しさなど
消化器症状 腹痛、吐き気、嘔吐、下痢など
全身症状 アナフィラキシー、アナフィラキシーショック 

食物アレルギーがある人の人数は?

食物アレルギーがある人の数は正確にはわかっていません。乳幼児の5~10%、学童期の1~3%、全人口では1~2%とされ、昨今は増加傾向にあると言われています。

5年毎に調査が行われている東京都の「アレルギー疾患に関する3歳児全都調査」では、「3歳までに食物アレルギーの症状があり、かつ診断されている」という回答が1999年に7.1%だったのが、2014年に16.7%と15年間で2倍以上になっています。

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また、2013年に行われた全国の公立小学校・中学校・高等学校を対象とした「学校生活における健康管理に関する調査(中間報告)」では、6年前の同じ調査と比べて、 どの年代でも増えていました。

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表示義務・推奨の28品目(容器包装加工食品の場合)

容器包装加工食品を対象とした食品表示法のアレルギー表示では、義務表示である「特定原材料」に7品目、推奨表示である「特定原材料に準ずるもの」に21品目の計28品目を指定しています。

2019年9月に特定原材料に準ずるものに「アーモンド」が追加されました。また、「くるみ」は現在、特定原材料に準ずるものですが、義務表示の特定原材料への移行が検討されています。移行した場合は義務表示品目となるため今後の動向に注目です。

特定原材料7品目 えび、かに、小麦、そば、卵、乳、落花生(ピーナッツ)
特定原材料に準ずるもの21品目 アーモンド、あわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけ、もも、やまいも、りんご、ゼラチン

さて、日本で指定されているのは現在28品目ですが、この品目以外の食物アレルギーの方に出会うことがあります。

日次利益管理

アレルギー表示は、妥当性や改正の検討が3年毎に行われており、その検討の際に集められる全国の医師からの報告を基に、症例数や重篤度を勘案して表示品目が決められています。

参考までに、先述のアーモンドの追加の際の検討材料となったものは次のようになっています。

日次利益管理

また食物アレルギーの原因となるアレルゲンは、28品目以外にもあります。28品目以外の食物アレルギーの人がいても、何ら不思議ではないのです。

また、日本の「アレルギー表示の考え方」についてもご紹介します。諸外国では「甲殻類」「魚類」「木の実(ナッツ)類」のように「○○類」で表示をしている国がありますが、日本でこの表示は認められていません。

これは、諸外国ではアレルギー表示を「注意喚起」に重きを置いているのに対し、日本は「注意喚起」とともに「患者の選択肢を狭めない」ことも重要であると考えているためです。例えば、えびアレルギーであっても、かにが食べられたり、その逆の場合もあったりします。この場合、甲殻類と表示してしまうと、食べられるのに食べられない、つまり選択肢を狭めてしまうことになります。

そこで、生活の質を落とさないよう個別の食品を表示するルールになっているのです。しかし、実際のところ甲殻『類』アレルギーやナッツ『類』アレルギーと申告する人は多数いるため、食事を提供する場合は特定の食品だけでなく類似の食品にも注意が必要です。

専用調理器具はどのくらいのお客が望んでいるのか?

そこで最後に、どのくらいの当事者が専用の調理器具を望んでいるかを(株)CAN EATと当法人が共同で行った「食物アレルギーとテイクアウトに関する実態調査」からご紹介します。

この調査は、緊急事態宣言下の2020年6月に、本人が食物アレルギーまたは、家族に食物アレルギーの人がいる131名に対して飲食店のテイクアウト利用状況を調査したものです。回答者は、80%が30~40代の3~4人家族で、70%が家族内に食物アレルギーがある人がいるという属性でした。

さて、この調査の「普段外食をする際、どのような点に気を付けていますか?」という質問に対する回答が以下です。

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計69%の人が調理器具については気にしていない結果となりました。半数以上の人たちは、原材料は確認したいが、専用の調理器具までは望んでいないと分かります。この調査では、ほかにも食物アレルギー当事者家族の意見が掲載されていますので、気になる方は以下よりご覧ください。

参照:参照:食物アレルギーとテイクアウトに関する実態調査(株式会社CAN EAT)

まずは小さく始めてみる

アレルギーとなりうる食品の中でも卵、乳、小麦が70%を占め、専用調理器具を望まない人も食物アレルギー当事者家族の70%くらいです。

飲食店事業者がアレルギー対応をする場合、初めから完璧を目指すのではなく、取り組みやすいところから対応していただくだけでも、救われる当事者家族はたくさんいるでしょう。小さく始めてみるという視点で取り組んでみてください。

ただし、小さく始めるにしても、表示をする際は、卵、乳、小麦だけを表示するのではなく7品目の枠組みで表示していただくと安心です。そして、専用調理器具を望んでいなくても対応前には調理器具の洗浄をお忘れなく。


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執筆者プロフィール

今村慎太郎 (NPO法人アレルギーっこパパの会 理事長) 

長女の食物アレルギーをきっかけに、2013年にNPO法人アレルギーっこパパの会を設立し、理事長に就任。「食物アレルギーがある人の安心できる外食は、料理を提供する人の安全からはじまる」を信念に、外食事業者に向けた講演、日本マクドナルドのアレルゲン検索システム構築の際のアドバイス、森永製菓、第一屋製パンとの新規事業立ち上げ、障害者就労支援施設でのアレルギー対応食品製造、100名規模の参加者全員のアレルゲンに対応した外食イベントの開催、約5年間に渡る『HOTERES(週刊ホテルレストラン)』でのコラム連載などを行う傍ら、週に数日、飲食店の現場に入り料理の提供も行っている。
公式サイト:https://www.arepapa.jp/

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