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コロナ禍で勝つ飲食店の条件とは?予約・来店データから紐解く2020年と2021年予測

株式会社TableCheck 代表取締役 谷口 優  2020年12月09日

tablecheck_コロナ禍で勝つ飲食店の条件とは?予約・来店データから紐解く2020年と2021年予測

消費者の外食利用スタイルはコロナ禍で一変し、今後も変化が続くとみられています。今、外食企業はどのような知見が必要なのでしょうか。

消費者向けの飲食店検索・予約サイトを提供するTableCheckが、2020年1~11月の集計データをもとに、今後の動向を予測します。

新規感染者数か、政府の施策か?飲食店への客足を左右するものとは

まずはTableCheckの2020年1~11月までの飲食店1店舗当たりの来店件数から、あらためて新型コロナが飲食業界に及ぼしたインパクトを振り返りたいと思います。

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昨年に比べると、やはり緊急事態宣言のあった今年の4~ 5月はガクンと来店件数は急減し、4月の前年同月比は9割近く落ち込みました。緊急事態宣言が解除された6月以降はゆるやかに回復し、「GoToイート」キャンペーンが始まった10月以降は前年とほぼ同水準にまで戻っています。

このデータをより細かく週単位、日単位で見ると、消費者心理がいっそう読み取れます。

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たとえば、感染拡大初期の第1波。東京都の感染者数が連日100人を超えると、店舗への自粛要請がなくとも、飲食店への客足はピタッと止まっていました。

ですが、第2波以降、自粛疲れや営業時間の短縮要請の緩和(20時から22時まで)があったことなどから、消費者心理に慣れが生じ、それまで横ばいだった来店件数が伸び始めました。

そして、11月の第3波。直前に開始された「Go To イート」は、いわば政府から外食のお墨付きが与えられたという印象を消費者に与えたことで、来店件数は開始直後から一気に伸びていきました。第3波懸念の報道が連日続いても、その傾向は強まっていきました。

ここから読み取れるのは、政府や自治体の施策や見解が、消費者心理、すなわち飲食店の来店件数を大きく左右してきたということです。新規感染者数の増減はさほど客足に影響を及ぼしていないことは、上記のグラフからも明らかです。

政府の動きはこれほど大きな影響を及ぼすので、やはり感染拡大防止に本当に効果があったのか、しっかりとデータでもって検証を尽くしたうえで、自粛要請や需要喚起などの施策を決定していただきたい、と切に願います。

コロナ禍の外食で客単価増。Go To Eatの効果とは?

次に、「Go To イート」キャンペーンのオンライン予約サイトから受付が開始された10月1日前後の推移も見てみましょう。

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2020年9月1日~11月25日までのグルメサイト別来店件数グラフ

グラフを見ると、開始直後に予約件数が一気に跳ね上がり、グルメサイトによっては300%以上増など、大きく巻き返していることがわかります。これは同キャンペーンの影響とみて間違いありませんが、それ以外にも“リベンジ消費”と言われる、抑圧されていた消費行動への反動も影響しているでしょう。そしてもっとも大きな要因としては、前述した通り政府主導の施策=公式なお墨付きであることが、消費者心理を動かしたと考えられます。

もうひとつ重要なポイントは、平均支出額、利用単価の上昇です。「日本フードサービス協会月次統計データ」によると、ファストフードや居酒屋業態の客単価は下がっていますが、ディナーレストラン業態では微増しています。背景には、外食する頻度が減った分、1回の食事を贅沢に楽しみたいという心理が働いていると推測できます。

業態別の客単価推移2020年5-10月(日本フードサービス協会)

次にグルメサイト別の予約件数推移データを見てみると、やはり「GoToイート」キャンペーンの影響で10月からどのサイトも急激に伸びています。TableCheckの場合、クライアント店舗は「一休レストラン」がもっとも多く利用されていますが、消費者視点で考えると、客単価4000~5000円のもう少しカジュアルな業態の飲食店がもっとも好影響を受けているのではないか、とみています。

これは、キャンペーンの仕様が関係しています。「GoToイート」キャンペーンは、ランチで500円、ディナーで1000円のポイント付与があります。「一休」掲載店のメイン顧客層の客単価は1万5000円ほどで、そのほかの「ぐるなび」「食べログ」「ホットペッパー」は5000~6000円ほど。割引のインパクトは後者3サイトのほうが強いので、気軽に行けてお得感もあるカジュアル業態のほうに多く足を運んでいるということでしょう。

「GoToイート」キャンペーンは、全体的に落ち込んでいた飲食店への来店件数を底上げする効果があった点では、プラスに働いたといえます。ただし、ネット予約をグルメサイト経由のポイント還元に限定したことには、疑問が残ります。飲食業界でもキャッシュレス化を推進する目的があったとするならば、キャッシュレス決済の還元施策と同様、キャッシュバックでも良かったのではないでしょうか。

グルメサイト経由にすることで、飲食店はグルメサイトに予約が入った分だけ「送客手数料」を支払う必要が出てきますし、主要なグルメサイトと契約していない飲食店は、あらためて複数媒体と契約し、予約管理が非常に煩雑になってしまう、というデメリットがあります。

コロナ禍で “人気店”をつくる2つの秘訣

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コロナ禍においても強い飲食店の共通点を考えると、これはズバリ、“人気があるお店”です。中国ではロックダウン以降にレストランの平均支出が上がったという話を聞きます。理由は先述した通り、外食頻度が減った分、1回の食事を贅沢にしたいという心理によるものです。

具体的にいえば、普段外食を週1回していた人が、コロナ禍で月に1回になったとします。であれば、どこにでもあるチェーン店よりも人気店やブランド力のあるレストランに行きたくなるでしょう。これはテイクアウトやデリバリーの注文件数についても同じことが言えます。

店内喫食の増加に反比例して、テイクアウト、デリバリーの注文件数は減少していきましたが、それでも継続してオーダーが入るのは人気店であり、いわゆる情報発信力やブランド力がある店です。他方、知名度がないなどの理由で注文が入らない店は、デリバリーやテイクアウトをやめていくという構図になっています。

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では、なぜ人気店は「人気」なのでしょうか?これに関していくつか言えることがあります。

ひとつは、やはりブランディングや情報発信力が関係しています。今の時代、誰もがネットにアクセスすれば、いつでも簡単に情報発信が可能です。SNSなどを利用して、自分のお店の世界観やコンセプト、名物料理や来店客の感想などをこまめに発信して、自店舗のブランドを作り上げる努力を普段から重ねているお店は、ユーザー、つまり消費者と直接つながっているため、苦境に置かれた時でも、フォロワーやファン、リピーターなどに支えられ、なかには売上が前年比超で推移している企業や店舗もあります。これらはSNSの扱いに長けているなど、マーケティングスキルが必要なある意味特殊な分野でもありますが、取り組む価値は非常に高いと思います。

ふたつ目は、飲食店の基本に立ち返って、シンプルに既存顧客を大切にするということ。これは今お店に来ているお客様へのサービスと、来ていないお客様へのサービスの2通りあります。

まずはご来店されているお客様に対して、スタッフがおすすめを言うなど、ひと手間かけた接客ができているかが重要です。そのためには店長がフロアを見て、スタッフへ指示・教育することが求められますが、もともと店長はそれ以外の多くの雑務もこなしている状況です。まずは目の前のお客様に集中できる環境づくりが不可欠で、日々の伝票集計などの雑務をITツールで自動化するなど、何らかの対策をしたほうがいいでしょう。

次に、来店されていないお客様へのケアです。たとえば、ヘアサロン業界には「追っかけメール」と呼ばれる手法があります。2か月に1回自動的に「そろそろヘアカットですね」とメール等でアプローチして来店を促す手法です。3か月以上来店していないお客様に対しては、より強い誘因となるクーポンを送ってみたりするわけです。

飲食店は定期来店するお客様が美容室に比べると少ないですが、こういった領域はまだほとんど着手されていません。飲食店も美容サロン同様にリピーターを獲得していく必要がありますが、店の営業をしながら、接客しながら、料理をつくりながら、予約管理しながら、と手が回っていないお店が大半でしょう。

この解決策として、顧客管理ツールによるデータの活用があります。既存顧客に対する「追っかけメール」などは手動で行おうとすれば、膨大な時間と手間がかかってしまうため、このあたりはITツールの活用が必須でしょう。ITツールを駆使して顧客データをしっかり活用していくことが、これからさらに重要になってくる人気店の秘訣だと思います。

予約データなどを自動的に蓄積し、分析や活用ができるシステムの力を借りてファンやリピーターを増やしていく。これがこれからの飲食企業の戦い方の基本となっていきます。来店履歴やキャンセル歴、注文履歴など、顧客のあらゆる情報を蓄積することで、より有効かつ効率的、つまり最適な販促が自動的に打てるようになります。自店舗と相性のよい顧客層にのみ絞り込んで広告を打ったり、優待を送ったりなど、より効果的なアプローチが可能になっていきます。

「忘新年会特需」が見込めないコロナ禍の年末年始。2021年はどう生きるか

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最後に、来店データの推移から飲食業界の年末年始、さらに2021年の業界動向を予測してみましょう。

「Go Toイート」キャンペーン等によって今年10~11月は右肩上がりで順調に客足は回復傾向にあり、11月の来店件数の1か月平均は前年比を超えていました。

では、12月、1月はどうでしょうか。第3波の到来や自粛要請、時短営業要請で、残念ながら確実に客足は急減してしまうでしょう。さらに、大人数では会食が困難な状況のなか、忘新年会特需が見込めず、年末年始は飲食業界にとって非常に厳しい状況になってしまうでしょう。

忘年会を書き入れ時とする大箱の居酒屋業態は、特に苦しい状況に陥ってしまう可能性があります。居酒屋業態は、店舗によっては年間売上の20%を忘年会で稼ぐといわれる業態で、この年末をどう乗り切るか、が2021年の命運を分ける瀬戸際になります。年末年始に見込んでいた売上を大きく下回ってしまうと、1月以降さらに廃業する企業が増えてしまう可能性も否定できません。

これまでの消費者動向から、2021年の飲食業界動向を予測するならば、
プラス要因として考えられるのが、政府の追加支援、自粛・時短要請解除、そして、有効なワクチン開発のニュースなどでしょう。これまでも見てきた通り、飲食店への客足は、新規感染者数の増減と相関していません。政府の動きに大きく左右されています。

政府の適切な対応はもちろんのこと、安心させてくれる明るいニュースが増えれば、消費者間の閉塞感も改善され、外食需要も自然と回復していくと考えています。長期的に見ればインバウンドの復活も期待できますし、いずれにせよ2021年は希望の年になってほしい、していきたいと強く思っています。


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執筆者プロフィール

株式会社TableCheck 代表取締役 谷口 優 

1984年神奈川県生まれ。商社勤めの父親の影響で、幼少期の約10年間をシンガポールで過ごす。国際的な統合決済管理プラットフォーム企業で、営業・リーガル・経営企画などさまざまな業務に携わる。
2010年よりEnglish OK(のちに“ピクメディア”に社名変更)で創業メンバーとして新規事業の立ち上げを経験した後、2011年3月11日に株式会社VESPER(現・株式会社TableCheck)を創業し、CEO(最高経営責任者)に就任。飲食店向け予約・顧客管理システムを国内外26カ国・地域の約6500店舗に提供し、グローバル展開を進めている。
https://www.tablecheck.com/ja/join/

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