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飲食店の新業態まとめ2020年版~コロナ禍で脱・居酒屋、ゴーストレストラン出店すすむ

2020年12月11日

相次ぐ大手の閉店と業態転換

大手外食チェーン各社は不採算店を閉店する一方でニューノーマル時代に対応する新業態を打ち出している。目立つのは、居酒屋業態から食事中心となる食堂や、コロナ禍でも客足の落ちない焼肉業態への転換、テイクアウト、デリバリーへの参入だ。

ワタミは「ミライザカ」や「三代目鳥メロ」といった主力の居酒屋ブランドを中心に、全店の2割にあたる114店舗を2021年3月末までに閉店し、「ワタミ」120店舗を2022年3月末までに「焼肉の和民」に業態転換することを発表した(2020年10月発表)。

また、エー・ピーホールディングスも「塚田農場」の業態変更モデル、「つかだ食堂」を立ち上げ、食事主体の店舗を増やしていく姿勢を見せている(2020年6月発表)。「はなの舞」などを展開するチムニーは、72店舗を閉店しながら、海鮮料理「はなの屋」や焼肉店、食堂などへの業態転換をはかる予定だ(2020年6月発表)。

単一業態で展開してきた「鳥貴族」も、2021年7月の1号店出店を目標に、鶏肉を主体としながらテイクアウトやデリバリーが可能な非アルコールのブランドを業態開発すると明らかにした(2020年7月日本経済新聞発表)。同じく単一業態で展開してきた「串カツ田中」は、一足先に鳥と卵の専門店「鳥玉」でマルチブランド化へ舵を切っている(2020年9月発表)。

一方、ファミレス最大手のすかいらーくホールディングスは、都市部の「ジョナサン」など約200店舗を2021年末までに閉店し、グループ内の他ブランドへ転換。同時に、テイクアウトやデリバリーに対応する店舗を増やし、今後はデリバリーに特化した業態も開発するという。同グループは緊急事態宣言下の2020年4月にテイクアウト対応店を全国2800店舗に拡大した。テイクアウト専用サイトの会員登録数を増やし、売上は毎月、前年比2倍以上を保ち続けている(2020年11月発表)。

デリバリーサービス拡充で増えるゴーストレストラン

フードデリバリーのイメージ(Wolt)

UberEatsや出前館といったフードデリバリー代行業の台頭で拡大してきたデリバリー市場は、コロナ禍の外出自粛や在宅勤務の広がりを追い風に成長を続けている。

ヨーロッパを中心に23か国100都市以上で展開しているフィンランド発の「Wolt」が日本に進出するなど、新規参入するプラットフォーム事業者も目立つ。

デリバリーサービスの拡充にあわせ、実店舗を持たない飲食店、いわゆるゴーストレストランを運営する企業も増えた。「ハードロックカフェ」や「カプリチョーザ」を展開するWDIは2020年6月30日、フードデリバリーに特化した「WE COOK」をウェブ上にオープン。ガーリックシュリンプ専門店や、台湾火鍋、本格派ナポリピッツァなど、ひとつのサイトに世界各国の料理店を複数出店する。

また、ダイヤモンドダイニングも既存ブランドをデリバリーサービス限定の新ブランドとして再構築。韓国料理やタイ料理といった専門店22ブランドを展開している。

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デリバリー専門「東京唐揚げ専門店 あげたて」メニュー

ひとつのキッチンで複数のデリバリー専門業態を展開できるのがゴーストレストランの特徴であり強みだ。既存の実店舗のキッチンを活用すれば、新たな設備投資や人件費負担もなくスピーディに開業できる。

肉バルや海鮮居酒屋など多彩な業態を運営しているGlobridgeはこの手法で、デリバリー専門の「東京唐揚げ専門店 あげたて」を展開。累計出店数は1年で150店舗を超えている。

デリバリーやテイクアウトは、イートインの代替手段ではなく、もうひとつの販売チャネルだ。これまで中食にあった需要を新たに獲得して出現した巨大なマーケットともいえる。Globridgeの場合、デリバリー事業は既存の売上に毎月平均200万円上乗せし、コロナ禍でも前年比130~140%の売上を出しているという。

ポストコロナ時代に訪れるアナログとデジタルの融合

デリバリーやテイクアウト市場では、オンライン注文や事前決済など、飲食店のデジタル化が進んだ。イートインの店舗でも、接触機会を減らすためにタッチパネルの導入やキャッシュレス化が広まっている。デジタル化には顧客側の利便性を高め、店舗側は効率化で従業員の負担を軽減するといったメリットがある。加えて、デジタル化が飲食店経営にもたらす最も大きなメリットは、顧客情報のデータ管理が可能となる点だ。

データとデジタル技術を活用した、顧客や社会のニーズにもとづくビジネスモデルの変革はDX(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれ、あらゆる分野で注目されている。オンラインとオフラインが融合することで、価値の提供も抜本的に変わる。顧客の注文履歴や来店頻度といったデータの蓄積は、細分化していく顧客ニーズに寄り添ったニッチなサービス提供をも可能とするだろう。

たとえば、カスタムサラダ専門店「クリスプ・サラダワークス」を運営するCRISPは、キャッシュレスセルフレジやモバイルオーダーアプリを自社で開発。月に約5万人いる利用客のキャッシュレス比率は85%で、完全キャッシュレスの店舗もある。対面販売をしているが、オンラインでの事前注文は7割近い。また、favyが運営する高級焼肉店「29ON(ニクオン)」は完全会員制のサブスクリプション(定額制サービス)モデルで、取得した顧客情報を活用し、来店促進のためのお知らせなどを配信している。

伊勢神宮の参道で150年ほど続く食堂を経営するゑびやは、来客予測システムを開発。POSの分析や店頭の通行量の測定、混雑状況の可視化、来客予想、コミュニケーションツール、データベースの導入支援といった、サービス業に関わるデータを可視化・予測するサービスを提供している。事実やデータにもとづいて、どんな商品を売れば利益率が一番上がるかといったことを一元管理する。

回転寿司を完全フルオーダー化し、安くて美味しい握りたての寿司を提供する例もある。回転寿司「若竹丸」を運営する大山は、顧客のフルオーダーの注文データを発注業務に活用し、自動発注の試みを行っている。

また、EC(インターネット通販)でも、顧客体験を高め、関係性を深めることは可能だ。フランス料理の有名シェフ田村浩二氏が手掛ける「Mr. CHEESECAKE(ミスターチーズケーキ)」は、数量限定販売のため日本一入手困難なチーズケーキともいわれている。

もともと趣味で作っていたチーズケーキがSNS上で爆発的な人気に。消費者が食べるまでの香りや味、温度変化などを逆算したメニュー開発のほか、パッケージや同封されるメッセージカードといった隅々にまで徹底された唯一無二の世界観が、単なるチーズケーキといった機能的価値に感情的価値を付随し、熱狂的なファンを掴んでいる。席数という物理的な制限を超え、世界中の顧客に対応できるのがECのポテンシャルといえる。

ニューノーマル時代を生きる飲食店の心がまえ

コロナショックを受けながらも新業態開発に取り組む外食企業は少なくない。各企業のホームページやニュースリリースを元に、2020年にオープンした飲食店の新業態の中から、DXに取り組む様子がうかがえる例を一部、別表に掲げた。規模の大小に関わらず、少なくない企業が時代の潮流を感じ、変革を求めていることがわかる。

中小企業の収益向上が見込める業態への転換やデジタル化の促進を、国も新たな補助金や融資といった施策で支援する姿勢を見せている。2020年度第3次補正予算案や21年度当初予算案に盛り込む方針だ。また、東京都はすでに都内の中小飲食事業者向けの業態転換支援を打ち出している。新たなサービスとして、テイクアウト、デリバリー、移動販売を始める場合、経費の5分の4以内の額を助成するというものだ。

業態転換は体力や知見の乏しい中小事業者には難しい場合がある。だが、たとえ新型コロナウイルスが収束したとしても、変化した消費構造は元には戻らない。将来を見据えた変革なくして、自店舗の売上が元の水準に戻ることはないと考えるべきだ。

業態自体を変えることは無理でも、集客方法やサービス内容を時代のニーズに合わせ変化させることは可能だろう。コロナ禍で顧客の嗜好はますます細分化された。これまでのような多人数を狙った宴会プランより、少人数向けや付加価値のあるエッジの効いたプランが有効と見られている。

飲食時間も、東京都が推奨する5つの小(少人数、小一時間、小声、小分け、小まめな消毒)に対応した1時間程度のライトなプランと、ゆったりと金額を気にせず過ごせる時間無制限、飲み放題プランの二本柱といったサービス展開が考えられる。集客方法においても、継続的な来店を促し顧客関係性を築けるサブスプリクションや、SNSを利用したクラウドファンディングは比較的取り組みやすい手法だ。

コロナ禍は大きな試練だが、うねりの中にかつてない変革を促す希望の光はともり続けている。新たな時代に自店舗が提供できる価値とは何か、中長期的な視点で経営基盤を見つめなおしてほしい。


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