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障害者が地域農業の担い手、売り上げ拡大の農園も~広がりつつある「農業」と「福祉」の連携(前篇)

白田 茜(フリーランス記者)  2016年10月20日

香川県では、健康福祉課が農林水産部やJAと連携して、農家の施設外就労を促進している。「NPO法人香川県社会就労センター協議会」(以下、センター)が窓口となり、農家と障害者施設の農作業受託のマッチングを行う。農家がセンターに農作業を依頼し、センターにいる専任コーディネーターがマッチングを行い、農作業を障害者施設に発注するというしくみだ。

同センターによると、2011年度の延べ作業人数が1752名、延べ参加施設数が286だったが、2013年度にはそれぞれ7704名、1233に急増した。農作業の量も増え、障害者施設に約1000万円近くの工賃が支払われているという。

最近の事例では、群馬県が2014年から「一般社団法人県社会就労センター協議会」を設置し、障害者施設が手がける製品やサービスを受注していたが、2016年から農作業の受注を開始。農業分野の専門家を配置し、農業のニーズ調査や障害者への技術指導を行い、農作業の斡旋を試みている。

群馬県障害政策課の松嶋貴明氏は、農福連携の意義についてこう語る。「障害者には個々に作業の向き・不向きがありますが、農業では作業が多岐にわたるため、適性にあった作業を見つけやすいという特徴があります」。

ほかにも、農家側の高齢化による労働力不足の解消、地域との良好な関係の醸成などの効果が期待できるという。

2016年は4月から5月にかけて、ビニールなどで覆われたレタス畑の草取り作業、ぶどう農園の収穫、トウモロコシ畑の植え付け・草取り作業などを行った。

だが、始まったばかりのため課題も少なくないようだ。農業者に障害者の能力が認識されていないことや、農業者が障害者施設に農作業を委託することに慣れておらず、工賃の設定に困っていることなどだ。また、障害者施設にとっても、時間外である早朝や夕方、土日などに行う作業への対応をどうするかなどの課題があるという。

松嶋氏は「農業に従事して、日々必要な食べ物を社会に提供することは、日常生活を営むうえで必要不可欠な部分を担うことにつながります。障害者・障害者施設が、『食物を提供している』という新たな社会的役割の創出ができれば、『障害者がいる社会』がより普遍的になるのではないかと期待しています」と語る。

この他、自治体とJAが連携して企業が障害者の雇用を促進する目的で作られた「特例子会社」を誘致したり、出資する企業を募って障害者施設を設立した事例もある。JAの支援は大きく農福連携に貢献しているという。今後、自治体による独自の取り組みはますます広がっていきそうだ。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
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