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高齢者こそ脂肪を摂るべき! 認知機能への効果とは~科学研究から見る、食と脳・こころ(前篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2018年07月23日

DHAやEPAを摂取するほど、うつになりにくくなるといえます。

脂肪酸の認知機能への影響は牛乳に含まれる成分でも

【Q】DHAもEPA以外にも、脂肪酸はいろいろあると聞きます。脂肪酸と認知機能の関係性について、他にどのような結果が出ているでしょうか?

大塚 DHAEPAは、分子に含まれる炭素が多い「長鎖脂肪酸」と呼ばれる脂肪酸ですが、他に炭素の数が810個の「中鎖脂肪酸」や、7個以下の「短鎖脂肪酸」についても結果が出ています。(※)

高齢者では、いずれも摂取量が多い人ほど、認知機能は維持されやすいという結果になったのです。これまで、EPADHAなどについては認知機能低下リスクを抑えられるという効果がよく研究されてきましたが、中鎖や短鎖の脂肪酸でも同様のことがいえるということです。

つまり、総じて脂肪の摂取が多い高齢者ほど、認知機能はよい傾向にあるということです。

※炭素の数の定義は文献により異なる。

【Q】中鎖脂肪酸は、どのような食品に多く含まれているのでしょうか?

大塚 さまざまな食品に含まれているので、特に多く含まれる食品というのはあまりありません。あえていうと、ココナッツです。

【Q】短鎖脂肪酸については、いかがですか?

大塚 短鎖脂肪酸については、由来源の食品が定まってきました。牛乳、それにバター、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品です。ウシが食べた餌を消化するとき、短鎖脂肪酸を作るのです。

【Q】ということは、牛乳や乳製品を多く摂取すると、認知機能低下リスクを抑えられるということでしょうか?

大塚 はい。特に60歳以上の女性にいえることですが、牛乳や乳製品をたくさん摂っている人ほど、認知機能は維持されていました。

【Q】この結果をどう見ていますか?

大塚 妥当な関係であるといえます。牛乳や乳製品を多く摂っている人は、食生活が全般的によい傾向にあるともいえるのでしょう。

長寿のためには「脂肪は悪者」の考えを見直すべき

【Q】脂肪分については、多くの人が避けるべき成分と考えている気がします。でも、高齢期になると、そうとも限らないということでしょうか?

大塚 そのとおりです。たしかに中年期までは、太っていたり、メタボリック症候群だったりすると、心臓病や脳血管障害のリスクが上がるので、メタボ検診(特定健康診査)を受けるなどして対策を講じるのは大切なことです。

一方、高齢期の方々は、いわば生き抜いてきた人といえます。その段階まで達すると、食べ過ぎでなく、むしろ痩せ過ぎに注意することが大事になります。そのギアチェンジを何歳のタイミングでするかは、今、研究者の間でもホットトピックになっています。

かつては太っている高齢者も多くいましたが、2008年にメタボ検診が始まってから、「太ったらだめ」という意識が強くなりました。その結果、特に6070歳ぐらいの女性にいえることですが、昔と比べると痩せ気味になってきています。太らないことを心がけてきたため、「脂肪は悪者」と信じている人が根強くいます。でも、高齢期に長いこと自立して生活することを考えると、そうではないのです。

認知機能を保ちながら、自立して長生きするということを考えれば、脂肪を含む食べものをたくさん摂って、痩せないようにするということは必要なことなのです。

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執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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