食の研究所

多様な民族と国が溶け込むインドネシア・メダンの食~人々と文化の交流が生み出した独特の食文化

佐藤 成美(サイエンスライター)  2019年01月29日

その他の料理も含めて、メダンの料理は濃厚で辛いのが特徴だと思った。

混ぜることで複雑な味わいが出る

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一皿にさまざまな食べ物を入れ、混ぜて食べる。
マリオットホテルにて。

ホテルの朝食のビュッフェでも、ロントンが並んでいた。「ロントンは一番好きな食べ物。毎日朝ごはんに食べます」とホテル従業員のアンディさんは言う。
ジャカルタで食べた、葉に包まれた「クトゥパ」というお米と似ている。違いを聞くと、「クトゥパはお米をヤシの葉で包んで蒸したり、ゆでたりしたものです。ロントンはバナナの葉で包んだもので少し緑色をしている。メダンやパダンなどスマトラ島ではよく食べます」と説明してくれた。

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(上)ロントン。
(下)ロントンを盛り付けたスープ。

ロントンのコーナーには、カレー、サユール、タウチョという3種類の汁もの、それにピーナツやトウガラシからなるサンバルが並んでいた。
タウチョは大豆の発酵食品で、日本の味噌のようなものだ。どうやら1種類の汁物にロントンを入れて食べるのだろう。

ところが、ホテルの人に取ってもらうと、それらがすべて同じ皿に一緒に盛られた。すべてを混ぜて食べるらしい。びっくりしたが、言われた通りに混ぜて食べると、複雑なうまみが効いておいしい。混ぜる割合にも秘訣があるのだろうか。

朝食のビュッフェではロントンのほか、日替わりでご飯、ヌードル、ピタパンといった各炭水化物のコーナーに、数種のおかずや汁、トッピングが並んでいる。翌日以降もホテルの人に盛り付けてもらうと、ロントンのときと同じようにすべてを1つの皿に一緒に盛り、混ぜて食べるようにと言われた。ご飯でも、パンでも、おかずと汁をすべて混ぜるのである。

麺のコーナーでは、中華麺とビーフンが置かれている。「一緒に食べるか」と聞かれたので「食べる」と答えると、1つの器に2種類の麺が入っていた。日本人ならこんな混ぜ方はしないだろう。

とにかく、ホテル(つまり現地)の人に従って、おかずもスープもトッピングも混ぜて食べてみた。すると想像できなかったおいしさがあった。混ぜて食べるのはメダンに限ったことではないが、この複雑な味わいに驚いた。

在メダン日本国総領事館で副領事を務める山森允夢さんによると、インドネシア人はもともと手で食べており、現在でも田舎に行くと手で食べている人に多く出会える。手では、混ぜないとうまく食べられないので、フォークやスプーンを使うようになっても、この「混ぜる」という習慣があるのではないかという。

先住民の食文化が料理に辛さをもたらす

メダン郊外に住むザラさんとリダさんに、メダンの市場に連れて行ってもらった。

肉や魚に加え、見慣れない野菜や果物が雑然と並んでいる。「これは何か」と聞きまくる筆者に、2人は丁寧に説明してくれた。

その説明では「これはバタックがよく使うスパイスだ、野菜だ」といったように「バタック」という言葉がよく出てきた。

「バタック」とは「バタック人」のことを指す。多くの島からなるインドネシアは、多様な民族から構成されている。バタック人は北スマトラの先住民で、イスラム教が大部分を占めるインドネシアでありながら、キリスト教を信仰している人が多い。豚肉を食べるし、独特のスパイスを使うことが知られる。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。

<記事提供:食の研究所
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