食の研究所

多様な民族と国が溶け込むインドネシア・メダンの食~人々と文化の交流が生み出した独特の食文化

佐藤 成美(サイエンスライター)  2019年01月29日

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メダンの市場で見られる食材の数々。

メダンではバタック料理が頻繁に食べられており、「アルシック」というバタックの伝統的な料理もよく食べられていると教えてもらった。これは、スマトラ島の限られた地域でしか栽培されていない「アンダリマン」というスパイスを使った魚の料理だ。

残念ながらアルシックを食べることはできなかったが、メダンの料理にスパイスが効いているのはバタックの影響もあるのだろうと思った。そういえば、山森さんは「同じ国でも、ジャカルタなどジャワ島にいるジャワ人と、メダンなどスマトラ島北部にいるバタック人はだいぶ民族性が違う」と言っていた。このこともメダンの独特の食文化の要因となっているのだろう。

香辛料の産地が異国の影響も受け・・・

スマトラ島は香辛料の産地で、メダンはもともとマレー人とバタック人がいた土地。香辛料をめぐってメダンの港にインドや中東、ヨーロッパなど多くの人がやってきた。17世紀にオランダが支配するとプランテーションができ、中国人やジャワ人が移住してきた。ここは、多様な人々が行き交い、インドや中東、中国、ヨーロッパなど多くの文化の影響を受けてきた土地なのだ。

インドネシア国民の9割近くはイスラム教を信仰しているといわれるが、ここではイスラム教、ヒンズー教、キリスト教、仏教が同じくらいの割合で信仰され、多くの言語が使われている。「信仰も言語も異なっていても、みなインドネシア人として溶け込んで生活しているんですよ」と山森さんは言う。

あらためてメダンの食を考えてみる。この地は、香辛料の産地という土地柄に加えて、先住民のバタック、隣国のマレーシア、さらにインドや中東、中国などからの多様な影響を受けてきた。そうしてできたのがメダンの食なのだろう。

「この味付けは中華風ですね」と現地の人に言うと、「いやこれはメダンのものだ」と言う。シュークリームでさえ、「これはメダンのお菓子です」と言われた。民族がメダンに溶け込んでいるように、食べ物もメダンのものとして溶け込んでいるようだ。

帰りはトランジットでマレーシアに立ち寄った。インドネシア語はマレー語を源流とするとメダンで聞いたが、その通り、空港で見聞きするマレーシア語はインドネシア語とよく似ていた。さらにフードコートやレストランを一回りしてみると、食べ物も似ていて、互いに影響していることを感じた。

インドネシアは多くの島、多くの民族から成り立つ多様性の国である。その中でもメダンは異国の影響を強く受け、いっそう多様性に富む場所だった。ジャカルタやバリとは異なる印象だったのは、そのせいだったのかもしれない。メダンの食のほんの一面を見ただけに過ぎないが、触れることができて興味深かった。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。

<記事提供:食の研究所
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