食の研究所

捕鯨論争を巡る「賛成の正義」と「反対の正義」~『おクジラさま』から「理解」のための学びを得る

漆原 次郎(フリーランス記者)  2019年02月18日

「クジラを食べたくて仕方ない」と思われている日本人

理解しあえなかったことを、理解しあうのは難しい。それでも「理解のための行動」を取り続けるしか、論争の先にある道を見出せないのではないか。

理解のための行動の1つは「日本の実態を伝え続ける」ことかもしれない。人は、他国の文化や伝統を「みんながそうしている」と捉えてしまいがちなもの。だが、実態はかけ離れていることもある。

日本人が鯨肉をさほど消費していないという実態を世界に発信したことのあるフリージャーナリストの佐久間淳子氏は、著書の中でこう述べている。「日本人はクジラを食べたくて仕方ないと思われていたようです。もし捕鯨を再開したら牛も豚も鶏も食べずにクジラだけ食べるのではないか、と」。

日本国内でも鯨食に対してさまざまな考えがある。それに、捕鯨の伝統は日本の象徴的なものではあるが、全国的な伝統を示しているものではない。これらのことを海外に地道に伝えていくことは、日本に対する心象の変化の始まりにつながるのではないか。一人ひとりが異文化の人と接するときにできることだ。

正義はただ1つではない

佐々木氏も、まさに理解のための行動を取り続けてきたことが『おクジラさま』から分かる。そして、本の最後に「太地の衝突から学んだ」ことを伝えている。

それは「正義の反対は悪でなく、別の正義」ということだ。

捕鯨賛成派と反対派、どちらの主張にも理由や事情がある。そこに至った運命や偶然もある。自分と異なる主張を「悪」として除こうとするのでなく、「別の正義」として捉え、その中身を知ろうとする。従えなくても、異なる考えがあることを認めはする。それもまた、理解のための行動の1つとなる。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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