食の研究所

革命的ゴボウ「サラサラごんぼ」はなぜ生まれたのか~世界で唯一の発展を遂げた根菜の物語(後篇)

漆原 次郎(フリーランス記者)  2019年06月24日

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福岡県農林業総合試験場で開発された新品種「サラサラごんぼ」。(写真提供:福岡県農林業総合試験場)

日本人しか栽培したり、さまざまな料理に使ったりしていないとされる「ゴボウ」をテーマに、その歴史と科学を追っている。

前篇では、日本に伝来したゴボウ属が食用として、世界の中で独自の進歩を遂げたことをたどった。日本にはゴボウを食材として受け入れる下地があったという、一応の結論に達した。

後篇では現代のゴボウに目を向けてみる。ゴボウでは知られる限り初となる、人工交雑を用いた育種により新品種が誕生した。福岡県農林業総合試験場が手がけた「サラサラごんぼ」だ。農家にとって重労働となる作業をなくし、食感や食味、また収量も向上したという。研究開発者に話を聞いた。

保温のための「トンネル被覆」が重労働に

福岡県でゴボウというと「ゴボウ天うどん」が知られる。だが、それだけではない。短期間で収穫する「若掘り」のゴボウが栽培され、県内外でサラダなどの食材に使われてきた。若掘りゴボウは、秋から翌春にかけて、農家が米づくりに使わない水田で栽培し、収穫するもの。葉つきで出荷するため、見た目がよく、鮮度も分かりやすい。

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柴戸靖志(しばと・やすし)氏。福岡県農林業総合試験場
豊前分場野菜水田作チーム長。大学では農学を専攻。
1988(昭和63)年に入庁。同試験場にて勤務。
転勤を経て2013(平成25)年より豊前分場にて勤務。
ゴボウのほか、イチゴ、ナス、トマト、キャベツ、ブロッコリー、
ホウレンソウなど各種作物の研究開発に携わってきた。

だが近年、福岡県の若掘りゴボウ農業に課題が生じている。他県でも若掘りゴボウ栽培が増えてシェアが減る中、「重労働」が伴うため高齢になった農家たちが栽培から手を引くようになってきた。

 その重労働とは「トンネル被覆」という作業だ。福岡県農林業総合試験場豊前分場(行橋市)野菜水田作チーム長の柴戸靖志氏が説明する。

「ゴボウ畑をトンネルで覆って暖かさを確保し、冬でも生育を促したり、葉枯れを遅らせたりしています。しかし、気温の変化に応じてトンネルを開閉しなければならず、これが重労働となります。材料費もかかります。トンネルなしで栽培できればよいのにという農家のみなさんの声を、JA(農業協同組合)を通じて聞いていました」

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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