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「煮物は冷めるときに味がしみる」のはなぜか~味付けの基本「さしすせそ」には科学的な理由があった

佐藤 成美(サイエンスライター)  2019年12月24日

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秋が深まり、温かい煮物が恋しい季節になってきた。とりわけ、だしのきいた煮汁がしみ込んだ煮物はおいしい。この煮物に欠かせない「味がしみ込む」とは、どんな現象なのだろう。科学の視点で探ってみた。

煮物は「水の利点」を生かした料理

煮物は食卓によく並ぶ定番のおかずだ。今の季節なら、里芋や蓮根などの根野菜の煮物がおいしい。寒くなると、風呂吹き大根やおでんも食べたくなってくる。味がよくしみた煮物はご飯にもぴったりだ。

とはいえ、煮物は家庭料理の定番でありながら、味がしみ込まなかったり、形が崩れてしまったりと、うまく作るのは意外と難しい。

煮物とは、だしに酒やしょうゆ、みりん、砂糖、塩などを加えた汁の中で、野菜や肉、魚などの食材を煮込む料理だ。食材は煮汁の中でやわらかくなり、うまみたっぷりの煮汁をしみ込ませる。口に入れれば、煮汁のうまみと食材の味が一体となった風味が口の中で広がる。

加熱調理には「焼く」以外にも「ゆでる」「煮る」「蒸す」など、いろいろな方法がある。「ゆでる」「煮る」「蒸す」は水を媒体にして、食材に熱を伝える方法だ。多めの水で加熱することを「ゆでる」、味も染み込ませることを「煮る」、また水蒸気で加熱することを「蒸す」という。

水は100℃以上にならないので、温度を調節しやすく、焦げつかせることもない。それに、対流が起こりやすいので食材をむらなく加熱できる。また、水にいろいろな調味料を溶かすことができる。さまざまな利点があるのだ。

煮物は、こうした水の利点を生かした料理といえる。調味料を溶かした煮汁の中で加熱し、食材をやわらかくすることと調味を同時に進ませられるからである。

味が食べ物に絡んだりしみ込んだりするのは、煮汁の中の成分である塩や砂糖、アミノ酸などが、食品組織の内部に移動し分散するからである。ここでは「濃度の異なる物質が同じ濃度になろうとする現象」がはたらいている。実は、これが煮物の味付けのとき、調味料を加える順番やタイミングで味が変わる要因のひとつとなるのである。以降で、詳しく述べていこう。


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執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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