食の研究所

学校給食にも押し寄せるコスト削減の波 合理化が招く新たな課題とは

白田 茜(フリーランス記者)  2014年03月26日

学校でみんな揃って食べる給食。単なる栄養摂取だけではなく、食育や社交性を養う目的もある。そんな学校給食が変わりつつある。合理化が進み、複数の学校の給食をまとめて調理する方式が増えてきた。さらに調理・運営ノウハウを持つ企業の参入も見られるようになってきた。学校は食物アレルギーの対応も迫られている。変わりつつある学校給食の“いま”を見てみたい。

時代は栄養補給から食育へ

学校給食の始まりは1889年。山形県鶴岡町(現鶴岡市)で貧しくお弁当を持ってこられない子どもに無償で昼食を出したのが始まりと言われている。

全国に普及したのは終戦後。食糧難の時代、子どもの栄養不足を補うのが目的だった。1954年には学校給食法が施行され、「国民の食生活の改善」が掲げられた。この頃の給食を見ると、脱脂粉乳にコッペパン、少量のおかずがついている程度。この後、脱脂粉乳が牛乳に替わり、おかずの量が増え、内容が次第に豊かになっていく。1976年には米飯給食が開始された。

その後、社会では肥満や生活習慣病の増加、偏食による栄養のバランスの乱れが問題になってきた。2011年施行の現行法では、「食に関する正しい理解と適切な判断力を養う」とあり、食育が重視されていることが分かる。

img_201403_01

どんな学校給食にするのかは市町村などの自治体で決めるので、特色を出すこともできる。例えば、「日本一おいしい学校給食」を目指している東京都足立区では、出来立てを提供するため各学校で調理をしている。素材にもこだわり、天然だしや薄味を基本とし、すべて食材から調理している。レシピ本も発行され(右の写真)、「低カロリーで栄養素のバランスがとれている」「材料費が安い」と好評だ。

文部科学省「学校給食実施状況等調査」によると、2012年時点で、学校給食を実施している学校は3万1419校。全国の94.1%の学校で給食が出されている。

そのうち、パンまたは米飯とミルク、おかずを出す「完全給食」の実施率は90.7%。少数だが、ミルクとおかずを出す「補食給食(0.8%)」、ミルクのみの「ミルク給食(2.5%)」もある。

公立の小中学校では、複数の学校の給食をセンターでまとめて調理する「共同調理場方式」の比率がじわじわと増えてきている(下の表)。

img_201403_02

調理方式別の給食実施状況

進む外部委託、コンビニも給食市場に参入

給食調理を民間企業に委託する「外部委託」も進んでいる。2012年度の公立小中学校の外部委託の状況を見ると、35.8%の学校が調理を外部委託しており、2010年度から4.7%ポイント増加している。ほかにも、運搬で41.2%、物資購入・管理で8.7%、食器洗浄で34.3%、ボイラー管理で19.4%が外部委託となっている。

外部委託が進む背景には、厳しい財政状況の中で、コストの削減や効率的な運営を求められていることがある。

民間企業の調理施設で調理し、学校に運ぶ「外注弁当方式」もある。例えば、大阪府の中学校では2009年9月時点で、大阪府の補助を受けて茨木市、吹田市、高槻市、富田林市の31校が実施しているという。このほか、府の補助を受けずに箕面市の中学校も実施している。箕面市によると「民間事業者の協力で、市の負担0円」だという。

コンビニエンスストアも給食市場に参入する。セブンイレブン・ジャパンは、2012年春から始めた食事配達サービス「セブンミール」を通じ、学校給食がない小中学校向けにグループの契約工場で作った給食を提供する予定だ。北海道8校と埼玉県11校の計19校と調整を進めているという。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
食の研究所はこちらhttp://food.ismedia.jp/

食の研究所 バックナンバー

関連タグ


メルマガ登録はこちら