食の研究所

食品業界で熱い注目、「介護食」市場が立ち上がる

白田 茜(フリーランス記者)  2014年11月26日

日本では65歳以上の高齢者が21%を超える「超高齢化社会」を迎え、「介護食」のニーズが高まっている。飲み込む力が弱くなった高齢者向けに、舌でもつぶせるようにしたり、飲み込みやすいように工夫した食品が出回るようになった。今後も介護食市場の拡大が見込まれている。介護食の商品開発が進み、販路も拡大してきた。国も介護食の普及に力を入れている。介護食の現状と課題について見てみたい。

超高齢社会で拡大し続ける介護食市場

65歳以上の高齢者人口は、2014年に3186万人(総人口に占める割合25.0%)で過去最高になった。「4人に1人が高齢者」という状況だ。一人暮らしの高齢者も増え続けている。65歳以上の単独世帯は2010年に29.7%になり、2030年には39%に達する見込みだ。

介護食市場は拡大が見込まれている。富士経済が2013年7月に発表した国内市場調査によると、2012年の介護食市場は1020億円。2020年には1286億円と、2012年比で26%の増加を予測している。施設用の伸びが鈍化する一方で、在宅用の伸びが見込まれているという。

なお、調査対象となったのは、流動食、やわらか食、栄養補給食、水分補給食、とろみ調整食品。「やわらか食」は、噛んだり飲み込んだりする力が弱い人向けのキザミ食やミキサー食、ソフト食、ムース食などを指す。ソフト食とムース食は、見た目や味を普通の食事と似た形に加工して、噛んだり飲み込みやすくしたものだ。

在宅介護の高齢者の6割が低栄養

そもそも、なぜこのような「介護食」が必要なのだろうか。

厚生労働省の調査によると、在宅介護を受ける高齢者の6割が低栄養傾向にあるという。

理由の1つに、噛んだり、飲み込んだりする機能が低下すると、食事が思うように摂れず栄養不足になることが挙げられる。低栄養が原因で病気にかかりやすくなったり、回復が遅れたり、活動や認知機能が低下するなど様々な影響があるという。

介護者にとっても、食事の準備には手間がかかる。噛む力が低下している人向けに食事を作るには、具材を煮込んだ後、細かく刻む、ミキサーにかける、すり鉢でする、裏ごしするなどの工程がある。飲み込む力が低下している人には、さらに、とろみをつけたり、ゼリー状に固めたりして飲み込みやすいように工夫する必要がある。だが、時間と労力の割には、ドロドロしているなど見た目が良くないので避けられてしまうこともあるという。

刻んだり柔らかくするなど、食べるための安全な処理がしてあり、様々なバリエーションがある在宅用介護食は、高齢者本人や介護者にとっても重要な食材になっているのだ。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
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