食の研究所

マクドナルドの本当の勝負はこれからだ 規模の追求から次のフェーズへ

菅 慎太郎(株式会社味香り戦略研究所)  2014年12月24日

成熟期に入ったチェーンの構造転換

ショッピングモールに入っていた店舗や、何十年も地域に定着していた店舗が突然閉鎖になる。最近、マクドナルドの閉店が加速しているように感じます。これは決して感覚的なことではなく、公表数字からも実際の店舗数の減少ぶりが伺えます。

下のグラフは、直営、フランチャイズを合わせたマクドナルドの店舗数の推移を、公表されている数字(CSRレポート)からまとめたものです。

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グラフを見る通り、近年店舗数は減ってきています。2013年には、前年より116店舗も減少しています。チェーン店業態は規模の拡大で競争優位を出すのが王道と言われていますが、マクドナルドはなぜ規模を縮小しているのでしょうか。

背景にあるのは、日本の「世帯人数の減少」「少子高齢化」といった社会環境の変化です。マクドナルドをはじめ日本のチェーン店業態は、「将来の人口が減る(=売上の分母が減る)」ことに備えて、経営基盤のスリム化、規模の追求から効率の追求へのシフトチェンジ、さらには高齢化による買い物商圏縮小への対応など、構造転換を進めなければいけない時期に来ているのです。

マクドナルドはもう「ダメ」なのか?

中国産鶏肉製品のショッキングな報道を受けて、日本国内における「中国産」食品への安心は崩壊に近いところまで落ち込んでいます。食料の安定供給と経済性という観点では、中国の生産拠点は将来的に欠かすことはできませんが、短期的には、多くの消費者が警戒せざるを得ない心情に置かれています。

マクドナルドは消費者の反応を受けて、調達先をタイなど他の国にシフトすると同時に、「安心」を取り戻すため、検査体制の強化や、さらなる情報公開に努めています(詳細は同社のホームページを参照)。製造工程や細かい生産プロセスまで公開し、スペックを満たす「安全」だけではなく、消費者に納得できる「安心」を目指そうとする意思が伝わってきます。

しかし、同社はこうした迅速な取り組みと体制の構築をもってしてもこの夏は非常に厳しい戦いを強いられ、2012年12月末の連結税引き後利益が170億円の赤字になる見込みを発表しました。来年には消費税のさらなる増税の可能性があり、食費の抑制が加速するかもしれません。

市場の変化に適応しようと構造転換を図っていたなか、マクドナルドに突然「安全・安心」の問題が降りかかりました。マクドナルドはこのままファストフード業界の中で沈没してしまうのでしょうか。

ライバルとの競争はもはや意味がない

外食産業の市場規模について調べてみると、「日本フードサービス協会」「食の安全・安心財団」の発表によれば、平成25年(暦年)には、世帯1人あたりの外食支出や法人交際費増加が予想され、前年比2.9%増の23兆9046億円と推定(平成26年6月発表)されています。

消費税増税による負担よりも、世帯人数の減少やライフスタイルの変化のほうが影響要因としては大きいと見ているようです。単身世帯が多くなることで家庭での調理需要が落ち込み、外食や惣菜への依存率が高まっていくのは、これからの長期トレンドとして想定され得ることです。

ここで注目したいのは、外食産業のなかで勝ち負けのはっきりとした差が出てきているということです。先の統計では、給食主体部門における「そば・うどん店(立ち食いそば含む)」は対前年比7.1%増加と著しい伸びを示す一方、ファストフードが含まれる「その他飲食店」は、同1.3%減と苦戦をしています。

これらの数値を見るに、ファストフード業界のなかで「ライバルに打ち勝つ」ことを目指す「競争」はもはや意味がありません。打ちたてのうどんと出来たての天ぷらが手頃な価格で食べられる丸亀製麺のように、時代の中で「お客様が何を求めているか」という、業種を問わない本質的な価値を模索する視点が重要になっています。

また、「(消費者は)食費にいくら出すのか」「趣味と食費のどちらにお金を使うのか」という根本的な問いにまで真摯に向き合うことが、消費拡大の戦略を描く上でのポイントとなります。競争相手は「ライバル」ではなく、いまや「消費者」なのです。

執筆者プロフィール

菅 慎太郎(株式会社味香り戦略研究所) 

株式会社味香り戦略研究所味覚参謀、口福ラボ代表。味のトレンドに特化したマーケティングの経験を生かし、大学での講義や地方での商品開発や地域特産物の発掘、ブランド化を手がける。
キッズデザインパーク講師。日本味育協会認定講師。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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