食の研究所

お腹も心も満たせるか? 介護食品は「スマイルケア食」へ

菅 慎太郎(株式会社味香り戦略研究所)  2015年01月28日

「味」だけではおいしくならない

おいしさのトレンドは年を追うごとに変わっていきます。近年では、味については塩スイーツやコクブーム、苦味の利いた無糖茶・コーヒーなど五味の種類が一巡し、味だけで商品を差別化したり新基軸を打ち出すことが難しくなってきています。そこで、技術的なハードルは高いのですが、香りや食感の開発に軸足が移りつつあります。

こうした背景には、食が、「空腹」や「身体的な成長」といった物理的なニーズを満たすだけのものから、ストレス社会に対応する癒やしを与えたり、自己満足を得る「ブランド」としての位置づけを持ち始めていることが挙げられます。SNSなどで自分の食事の内容を発信する人が増えているのも、その表れでしょう。いまや人々は、「腹を満たされる」ことよりも、むしろ「心を満たされる」ことを食に求めるようになってきているのです。

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おいしさの構成要素(出典:味香り戦略研究所)

一方で介護食品は、「栄養を補給する」という機能を実現する一方で、「食味」を改善させながら「味」や「香り」とのバランスを考えていくことが求められます。また、嚥下・咀嚼機能が低下している人が食事をするため、食感を柔らかくする方向で調理をしなければならず、形状の安定や噛みごたえある食感が失われていきます。この「物足りなさ」をどのようにカバーするか、商品開発の工夫が求められるのです。

さらには、「食べたい!」という意欲や、食べられたことへの満足感、達成感を抱けるような見た目、香りを持つことも求められます。例えば、柔らかく加工しているけれど、見た目は本物の焼き魚のように見えるなど、日本人が得意とする創意工夫がこれからのスマイルケア食の発展に寄与することでしょう。

若い世代にとっては「遠い話」かもしれませんが、いずれは接することになる食品です。小中学生の頃からスマイルケア食についての教育をし、知識を持ってもらったほうがよいでしょう。世の中には「食べやすさ」を考慮した食品がある、という認識は、祖父母が食べる食に対して興味を持つきっかけになるでしょうし、互いの心理的距離を近づけてくれるはずです。

各家庭で、世代を超えて一緒に食べ、おいしさを共有する。こんな食のあり方こそ「食育」の目指すべきゴールなのではないでしょうか。

健康への道はちょっとした意識の変化から

「健康を意識した生活をしなければならないのは自覚している。でも、なかなか実現できない・・・」。多くの人が食生活の改善の必要性を感じていても、誘惑に負けてしまったり、意識が持続しないため、習慣化できないでいます。「やれ」と言われてもできないのが人間なのです。

一方、最近は、「やりたい」から「やり遂げたい」へと意識を変えることによって健康を実現することが提起されるようになってきました。

例えば最近ブームとなっている「菌活」は、「菌を食べ続ける」ことで、腸内細菌に対する定期的な働きかけを持続することです。食品メーカーがヨーグルト摂取の「14日間チャレンジ」キャンペーンを行ったり、キノコ料理のメニューを紹介してキノコによる菌活を提案しています。これらも、目標を持って続けてもらうことを目標としています。

食習慣自体への働きかけにも変化が見られます。例えば「プチ断食」は、誰でも気軽に挑戦できる短期間の断食のことです。「1日ならやれるかも」「やってみよう」と思わせることは、これからのヘルスケア市場における重要なカギとなっていくものと思われます。

こうした意識変容によって一人ひとりの健康維持への取り組みが変わっていけば、高騰し続ける社会保障費の増大にも活路が見出せるのかもしれません。

執筆者プロフィール

菅 慎太郎(株式会社味香り戦略研究所) 

株式会社味香り戦略研究所味覚参謀、口福ラボ代表。味のトレンドに特化したマーケティングの経験を生かし、大学での講義や地方での商品開発や地域特産物の発掘、ブランド化を手がける。
キッズデザインパーク講師。日本味育協会認定講師。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
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