食の研究所

もはや“やって当然”となった宅配ビジネス ―「お店に来て」から「お家に届けます」の時代へ

白田 茜(フリーランス記者)  2015年08月24日

スーパーは売上の減少に頭を悩ませている。日本チェーンストア協会の発表によると、2014年のスーパー売上高は13207億円。既存店ベースで前年比0.6%減だった。消費税率が5%に引き上げられた1997年から、18年連続のマイナスだという。消費税増税の影響や、景気回復の実感が乏しく消費マインドが回復していないことが背景にあると考えられる。売上高を増加させるためにも顧客のニーズに合わせた取り組みが欠かせないのだ。

薄利であっても、配送先のエリアを増やし、店舗の商圏外の消費者を取り込むことを他企業がしていれば、ネットスーパーに参入しないわけにはいかない。つまり、ネットスーパーは顧客の囲い込みにもはや必要不可欠な事業なのだ。店舗売上高に占める割合はまだ少ないが、今後、小売の売上に占める割合が上昇することが考えられる。

現に、2015年にはイトーヨーカドーのネットスーパーが2月期で売上高11.1%増の500億円となり大きく売上を伸ばした。対応店舗数は145店舗、顧客数では200万人にもなるという。イオンネットスーパーも100億円規模の売上高で成長を続けている。

富士経済によると、インターネットスーパーの市場規模は2015年には1000億円にまで拡大すると推計されている。

いかにコストを削減するか

ネットスーパーの多くは近隣にある店舗からユーザーの自宅まで商品を出荷する「店舗型」だった。しかし、店舗の在庫から出荷するため、欠品のリスクが高く、ピッキングや梱包に伴い従業員の現場の作業が煩雑になる、といったデメリットがあった。

これに対して、専用の物流センターから出荷する「センター型」もある。欠品リスクは低いが、設備投資や人員確保など先行投資が大きな負担になるというデメリットがある。

サミットは、センター型を導入していたが、2014年にネットスーパー事業から撤退。「黒字の見通しが立たない」と、その理由を明かした。受注数が想定を下回り続けており、採算が合わないという。

首都圏では大手総合スーパーの他、生協やコンビニエンスストアの宅配、さらには百貨店が参入するなど競争が激化している。複数のネットスーパーを利用している登録者が多く、固定客づくりが難しい状況にある。また、消費者の「無料が当然」という意識から、配送料が無料になっているのもネックだ。収益の改善のために一部の事業者では配送を有料化する動きもみられる。

競争が激化する中、ネットスーパーに本腰を入れるスーパーもある。イトーヨーカドーは、20153月にネットスーパー専用店舗「ネットスーパー西日暮里店」の運用を開始した。受注から製造調理、ピッキング、配送管理に至るまですべてシステムにより制御する。

業界初の取り組みとして、全長約600メートルのコンベアや、専用ハンディターミナルも導入するという。業界初の専用の設備やしくみを導入し、既存のネットスーパーの約5倍となる最大2000件の注文を1日に受けるという。都心部であれば、周辺に店舗のなかったエリアにも配送が可能になるという。店舗は、対面販売とネットスーパーの複合型で、ネットとリアル(店舗)を融合させた「オムニチャネル」の事業拠点になるという。

“宅配の老舗”生協は時間帯指定で対抗

ネットスーパーの競争相手はスーパーマーケットだけではない。

宅配の老舗といえる存在が生協だ。日本生活協同組合連合会によると、地域生協の宅配事業供給高は2014年度推計で169562300万円。1兆円を突破する規模で、数ある宅配サービスの中でも最も規模が大きい。近年は共同購入に代わり個別購入が急増している。2007年度には個別配送が共同購入を初めて上回った。

執筆者プロフィール

白田 茜(フリーランス記者) 

白田 茜(しろた あかね) 1978年佐賀県生まれ。 佐賀県庁で食品のブランド化に関わる。その後、大学院で農業政策や食品安全に関するリスクコミュニケーションを学ぶ。
食品コンサルタント会社を経て、現在は社会的関心が高い科学ニュースについて専門家のコメントを収集しジャーナリストに提供する活動をしている。関心のあるテーマは、農業、食品流通、食品安全、リスクコミュニケーション。

<記事提供:食の研究所
JBpress、現代ビジネス、ダイヤモンドオンライン、プレジデントオンラインの4つのビジネスサイトが共同運営する「食」の専門ページ。栄養士が勧める身体にいい食べ方、誰でも知っている定番料理の意外な起源、身近な食品の豆知識、食の安全に関する最新情報など硬軟幅広い情報を提供。
食の研究所はこちらhttp://food.ismedia.jp/

食の研究所 バックナンバー

おすすめ記事

関連タグ



食品メーカーなど8000社導入!製品規格書クラウド管理システム BtoBプラットフォーム 規格書

メルマガ登録はこちら