食の研究所

「のどごし」をつくるのは「香り」だった!―ここまで進化している食品フレーバーの世界

佐藤 成美(サイエンスライター)  2015年09月18日

日本でも明治から大正にかけて、ラムネやサイダー、チョコレートなどの製造が始まると、企業はフレーバーを使うようになった。だが、当初は輸入品を使用しており、フレーバー産業が本格化したのは、第2次世界大戦後に日本でも香料の合成が始まってからだ。1947年に食品衛生法が施行されると、合成香料も食品添加物として指定された。

その後、1950年代に広く出回った10%果汁入り清涼飲料水や粉末ジュースは、果汁がほとんど使われていないのにもかかわらず、さわやかなオレンジの香りがして斬新さを印象づけた。また、高度経済成長期から、インスタント食品やレトルト食品などの加工食品が生産されると、風味の劣化を補い、味わいを整えるためにシーズニングフレーバーが使われるようになった。

食生活が豊かになるにつれて、フレーバーの用途も広がり、さまざまなフレーバーが開発されている。

調香師が数千の香料から組み立てる

香りは非常に複雑で、1つの香りを構成する香気成分は、多い場合には数百から数千種類にも及ぶ。その上、濃度によって感じ方がまったく異なることもある。同じ種類の香気成分を混ぜ合わせても、比率が少しでも違えば、まったく別の香りとして感じられるのだ。

香りについての基礎研究の一場面。
地道な研究から新たなフレーバーの種が生まれる

フレーバーの開発は食品の香りを分析することから始まる。香りを感じる嗅覚のメカニズムが解明されていない上に、香気成分は複雑で微量なために分析は非常 に難しい。化学的な分析で香気成分の種類や濃度を測定するが、すべての香気成分を検出できるとは限らず、わずかな香りの違いを数値で判断することは難し い。そのため、人の感覚を利用して評価する官能試験も行われる。

そこで、この分析結果を手掛かりに、フレーバリスト(調香師)が数千種類もの香料から、食品のイメージに合うように香料を選び、配合して香りを組み立てる。

かき氷のシロップやガムに使われる「イチゴ」や「バナナ」などのフレーバーについては、その香りから果物のイメージを抱く人が多い。だが実際の果物に、その香りは含まれていない。これは現代と違い、まだ分析技術が進んでいないころに開発されたもので、「イチゴの赤」「バナナの黄色」などをイメージして創作されたフレーバーなのである。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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