食の研究所

「のどごし」をつくるのは「香り」だった!―ここまで進化している食品フレーバーの世界

佐藤 成美(サイエンスライター)  2015年09月18日

フレーバーの製品開発における基礎研究の様子

「のどごしからの香り」は、人が飲食物を飲みこんでいるモデル向けに分析装置をつくり、喉から鼻にまで到達する香り成分を分析した。さらに、「香りの余韻」は、飲食後香気成分がいつまで揮発して広がり続けるのかを分析して、口の中に残りやすい香気成分を突き止めた。

こうして分析の結果、食品の持つ香りと、喉から鼻にぬける「のどごしの香り」は異なることが明らかになった。そして、この「のどごしの香り」を表現できれば、より本物に近いおいしさを生み出せることを確認したのだ。

食品の新時代を築くフレーバー

同社は「フィールド調査」も行う。果樹園などに出かけ、果物が木に実っているような新鮮な状態で香りを分析するのだ。フィールド調査には、フレーバリストも同行し、現地で果物の香りを嗅ぎ、ひたすら果物を食べて、果物のイメージを自身に植え付ける。

「最近では、レモンの香りを分析するために瀬戸内海地方に行きました。マンゴーやピーチパインの分析のため、沖縄の西表島に行ったこともあります。フィールド調査はとても手間がかかりますが、徹底的に分析することでより本物に近い香りが再現できるようになります」

詳細な分析結果をもとに、フレーバーリストは香りを設計する。法律によって使える香料原料は決まっているため、分析した成分がすべて使えるわけではなく、分析したとおりに香料を配合してもイメージした香りにはなるとは限らない。そこは、フレーバーリストの経験やスキルがものをいう。フィールド調査で身につけた香りのイメージは、フレーバーをつくるための重要な手がかりになる。

こうしてできた「のどごしフレーバー」は、果汁を使わなくても、果物を口に入れたときから飲みこんだ後の香りを再現するとともに、果物を口に入れて噛みしめたときのような、みずみずしい感覚まで蘇えらせてくれる。

同社はリンゴやブドウなどの果物のほか、チーズやバターなどの調味料のフレーバー、変わったところでは焼き芋のフレーバーも開発している。さらにはビールやワインなどアルコールを飲んだときの香りを再現する「酔いここちフレーバー」も開発し、ノンアルコール飲料などに使われている。次々に個性的なフレーバーが生まれている。

科学技術の進歩とともに、フレーバーはますます進化しており、各フレーバーメーカーは、さまざまなコンセプトのフレーバーを打ち出している。消費者を喜ばせる新しい食品の開発を、フレーバーの進化が支えているのだ。

執筆者プロフィール

佐藤 成美(サイエンスライター) 

佐藤 成美(さとうなるみ) サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)、農学博士。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『「おいしさ」の科学』(講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

<記事提供:食の研究所
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