食の研究所

50年間でこれだけ増えた30代男性の必要エネルギー~「日本人の食事摂取基準」、5年ぶりの改定

漆原 次郎(フリーランス記者)  2020年04月30日

何よりも過剰摂取が顕著なものは、食塩だ。食塩に含まれるナトリウムの過剰摂取は、高血圧、慢性腎臓病、胃がんなどのリスクを高めるとされている。

厚生労働省は今回の新基準で「成人の目標量を0.5g/日引き下げる」ことを改定ポイントのひとつに挙げている。30歳代でのこれまで1日あたりの目標量は男性8g未満、女性7g未満だったが、改定後は、男性7.5g未満、女性6.5g未満となる。さらに高血圧や慢性腎臓病の重症化予防のためとして、1日6g未満とも設定された。

だが、食塩の値をめぐっては課題もある。私たちが目指すべき値が「日本人の食事摂取基準」以外にもいくつもあるのだ。

減塩目標は乱立状態、世界と日本でギャップ

世界保健機関(WHO)は、すべての成人の減塩目標として「1日5g」を掲げている。5gまでに抑えれば、高血圧、脳卒中、心疾患のリスク低減に役立つとしている。上述の男性7.5g、女性6.5gよりもずっと厳しい値だ。

 国内でも別の目指す値が示されている。日本高血圧学会は、「1日6g」未満を推奨している。この数値も、改定後の「日本人の食事摂取基準」の6.5gよりも厳しく抑えられたもの。

 目指すべき値が機関ごとに異なるというのは、食塩に限ったことではない。だが、食塩はとりわけ日本人が過剰摂取を気にかけている要素であるため、目指す値が複数あるのは大きな課題といえよう。

 2017年の国民健康・栄養調査では、30歳代の食塩摂取量は、男性10.2g、女性8.6gだった。確かにいえるのは、摂取量は年々低減傾向にはあるが、いずれの目標値からしてもまだ高いということだ。

個人がより活用できる基準を

「日本人の食事摂取基準」は、冒頭のとおり「個人」も対象としている。では、個人が食生活に活用できるかというと、読んで理解するには難しすぎる印象だ。

報告書では科学的根拠を重視していることはうかがえる。それはそれでよいことだが、根拠のボリュームが多い反面、国民が各項目の値をパッとまとめて見られるようにはなっていない。今後、個人の属性によって見るべき情報をカスタマイズできるようなことが実現すれば、一人ひとりがさらに活用できるようになるはずだ。

今回の改定にあたり、厚生労働省はパブリックコメントも募ったが、公表されているのはなぜか数値に関する5件の意見のみ。「分かりづらい」といったコメントはなかっただろうか。

国民個人としては、まずは「自分の摂るエネルギーや栄養素の量には、参考にできる基準がある」と認識し、「基準」の理解へとつなげたい。自分の健康や病気予防のために。

執筆者プロフィール

漆原 次郎(フリーランス記者) 

1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議会員。
著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。

<記事提供:食の研究所
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